最上静香
お節介な猫が去って、また風の音だけが残った。
最上静香
私はいつもの朝と同じく、コーヒーを淹れに小屋へ戻った。
最上静香
いつものようにカップを2つ用意して、出来るだけ静かに席に突いた。
最上静香
……
最上静香
この短い間で、あの猫に関わった全員が、きっと少しずつ不幸になった。
最上静香
……いや、何人もに人を疑う事を勧められた私が言うならば、もしあの猫の言葉が正しかったら。
最上静香
……
最上静香
……誰もの話が全部本当だとしたら、この話はとても不自然なものになる。
最上静香
……きっと、誰かが、もしくは全員が私に嘘をついているのかもしれない。
最上静香
そして、私も嘘をつくことを始めた。しかし、それはそもそも……
宮尾美也
そもそも嘘ついた事が無い人なんていないでしょう?
宮尾美也
そう言う前提から間違っているんじゃありませんか?
最上静香
……いつから起きてた?
宮尾美也
コーヒーの匂いで起きてしまいました。早く頂きたいです。
最上静香
お前の分は無いぞ。
宮尾美也
あら、では何故コップを2つも?
最上静香
えーと、一つはブラックでもう一つはホワイトで……
宮尾美也
もう少しうまく誤魔化せませんか?これだから嘘初心者は……
最上静香
嘘や誤魔化しにコツがあるのか?
宮尾美也
さあ、ついた事が無いので分かりません。
宮尾美也
それにしても、考えを口に出す人って本当にいるんですね。
最上静香
一人だと思ってたから。あ、そういえば……
最上静香
さっきあの猫が来たぞ。お嬢様はまだ生きてるそうだ。
宮尾美也
でしょうね。
最上静香
あんなに気にしてた割には余裕だな。というかおまえお嬢様と会ったのか?
宮尾美也
それはもう仲良しさんですよ。大切な約束までしてしまいました。
最上静香
約束?おまえ結構軽々しく約束するな。どんな事を言ったんだ?
宮尾美也
あの子の最期まで、ずっと一緒にいる……って。ロマンチックですね。
最上静香
……ああ、そういう……
最上静香
早速破ってるじゃないか!
宮尾美也
でも、これであの子に最期は来ないでしょう?
最上静香
……それは流石に私でもおかしいと分かる。
宮尾美也
それで、その猫さんが何を言ったんですか?
最上静香
え、特に何も……
宮尾美也
肩甲骨があるとかないとかでしたっけ。
最上静香
何故知っている。
宮尾美也
結構最初から起きてたんですよ。
最上静香
随分虚言癖があると言われていた。
宮尾美也
……静香さんは、私とあの猫さん、どちらを信じるんですか。
最上静香
……
最上静香
……それは勿論おまえだ、あの時も言っただろう。
宮尾美也
そうです。猫は私で、私は不老不死です。あの猫さんがウソつきなんです。
最上静香
……そうだな。
宮尾美也
あそこであの子に食べられたので、あの子ももう死にません。
最上静香
……そうだな。信じる。
宮尾美也
でも静香さんの愛の力で奇跡の復活を遂げました。
最上静香
この前は普通にあの猫に助けてもらったと言っていなかったか。でもまあ、信じる。
最上静香
さて、飲み終わったら、そろそろ行くとしようか。目的地はそれから探そう。
宮尾美也
せっかくだから、もう少し話してからにしませんか?だって……
宮尾美也
時間はいくらでもあるでしょう?
(台詞数: 50)