宮尾美也
ふわぁ……いい匂い。
最上静香
やっと目覚めたか。もう昼前だ。
宮尾美也
歩き疲れたんですよ。それよりこの匂い……香水変えました?
最上静香
コーヒーと簡単な軽食を作った。この前は世話になったからな。
宮尾美也
あら、それはありがとうございます。寝起きに料理が出来てるのはいい気分です。
宮尾美也
あら、とっても美味しいコーヒーですね。どこかで修行されてました?
最上静香
屋敷では、いつも私の役目だったからな。
宮尾美也
あれ、給仕さんだったんですか?てっきり用心棒的な方だと思ってました。
最上静香
……雇われた時は確かにそういう役職だった。
最上静香
ただ、あの屋敷の中でお嬢様と歳の近い人間は私だけだったんだ。
宮尾美也
あ、分かりました!それでその子のお世話さんみたいになったんですね!なし崩しに。
最上静香
その通りだ。
宮尾美也
そして、その子の為に働いていたんですね。
最上静香
その通りだ。
宮尾美也
そして、その子の為に私の心臓を探しに来たと。
最上静香
……その通りだ。
宮尾美也
本当にその子の為なんですか?
最上静香
……
宮尾美也
そういえば。その子が不死を欲しがったのって何故なんでしょうね?
最上静香
……
宮尾美也
それが欲しくなるのはそれが自分に無いからです。
宮尾美也
死なない事に憧れる人は自分に命の終わりを感じているからです。
宮尾美也
そういう人はね、ちゃんと生きているんですよ。
最上静香
……何が言いたい。
宮尾美也
お嬢様なのに凄いなあって。普通そんな事意識しませんよ。
最上静香
あの街はお前が居た所よりもっと殺伐としていた。そんな意識は誰もがしていた。
宮尾美也
なるほど、やっぱりそういう人の所にあるべきです。
最上静香
私からも聞きたい事がある。
宮尾美也
ああ、私くせっ毛で、このウェーブは元々なんですよ。
最上静香
あの街は、何故誰もいなくなったんだ。
宮尾美也
理由なんてありませんよ。人と言うものは、いずれ居なくなります。
宮尾美也
元々大きな街でもありませんでした。殆どの人は引っ越しましたよ。自然に。
最上静香
それでは、何故おまえはそうしなかった。
宮尾美也
……人が居ないのが好都合だったからですよ。面倒ですもの、人って。
宮尾美也
人と知り合う度に「でもこの人も死ぬんだなあ」って思うのも、
宮尾美也
怖がられるのも、面倒ですもの。
最上静香
……そうか。それではもう一つ。おまえは……
宮尾美也
ですから美也ですって、いい加減名前で呼んでくださいよ。
最上静香
おまえは一体誰なんだ?
宮尾美也
滅茶苦茶二度手間じゃありませんか。ですから私は
最上静香
おまえの言う「美也」とは、その街の領主の娘の名前だ。この前夜を明かしたあの屋敷のな。
宮尾美也
あれ?どうしてそれを知ってるんですか。
最上静香
あの屋敷を調べ回ったからな。写真こそ見つからなかったが、その名前は色んな所で見かけた。
宮尾美也
あ、もしかして私が寝てる時にですか?起こしてくれれば一緒に探したのに……
最上静香
おまえがその「一人娘」で無い以上、おまえが美也であるはずがない。
最上静香
それに、あの街で美也の墓を見つけた。すでにその人物はこの世にいない。
最上静香
お前の正体は誰で、何故美也を騙っている。その理由を聞きたい。
宮尾美也
……説明するのが面倒だから黙ってたんですよ。どうせ関係ありませんし。
宮尾美也
まあ、半分くらいは当たってますね。だって私は生きていますし。でも……
宮尾美也
確かに私は、美也じゃないです。
(台詞数: 50)