最上静香
……本当に、誰もいないのか。
宮尾美也
信用して頂けました?
宮尾美也
あ、遅ればせながらようこそ。今日はここでゆっくりしていってください。
宮尾美也
ろくなおもてなしはできませんけど。
最上静香
……小さい街ではないのに、この静けさ。ただ……
最上静香
どの家も、最近まで人が住んでいた形跡があるのが不可解だ。
宮尾美也
あ、それ私が最近まで住んでたからではありませんか?
最上静香
全ての家に住んでいたのか?
宮尾美也
飽きっぽいので、十数年に一度のペースでお引越ししてるんですよ。
宮尾美也
でも一番お気に入りなのはこの家ですね。大きくてベッドもフカフカなので。
最上静香
ここはこの街の主が住んでいたのか?
宮尾美也
ええ、父一人母一人娘一人お世話さん数人の賑やかな家族。
宮尾美也
だったらしいですよ。特にその一人娘がとても可愛らしいらしくて。
最上静香
やけに詳しいな。
宮尾美也
この街に住んでいましたから。一番偉い人の事ぐらい知ってますよ。
宮尾美也
……まあ、その一人娘さんが病気になってからは、あまり見る事もなくなりましたけど。
最上静香
……そうなのか。
宮尾美也
……むむむむむ!
最上静香
……どうした?
宮尾美也
静香さんって……
宮尾美也
なんでも信じるんですね。
最上静香
……自分でも損な質だと思う。それより、その病気は治ったのか?
宮尾美也
……どう思います?
最上静香
……親というものは、子どもをとても深く想う物らしい。きっとなんでもするのだろう。
宮尾美也
……はあ。
最上静香
そしてその親が街のすべてを動かせる人間だったなら、街だって巻き込んでしまう。
宮尾美也
特定の人の話してます?
最上静香
……ただ、本当に子どもを想っているのなら、側にいるべきなんだ。
最上静香
……ご主人様も、お嬢様も、決して心根は悪ではなかった。どこかで間違えてしまったんだ。
宮尾美也
間違う事は決して悪ではありませんよ。この世に無駄な物なんて無いんですから。
最上静香
……
宮尾美也
まあ、あなた達は時間は限られてるから無駄な事も失敗もしてる場合ではありませんけれど。
最上静香
おまえは、
宮尾美也
美也と言います。
最上静香
おまえはどうして、不死なんて物に手を出した。何を欲した。何を許せなかった。
宮尾美也
ええっと。随分昔の事なので、あんまり覚えていませんね。何だったでしょう。
宮尾美也
……でも、人の価値観はそれぞれといいますからね。私は人ではありませんけど。
宮尾美也
失いたく無いものを失ってしまう人もいれば、欲しくない物を貰ってしまう人もいるかもしれません
宮尾美也
ん、違いますね。そういう時もあればこういう時もある。あ、こういうのはどうでしょう。
宮尾美也
必要な物を失くす代わりに、要らないものをもらえるのが人生なんですよ。
最上静香
……お前は、どれくらい一人でこうしているんだ?
宮尾美也
忘れました。静香さん、今からお夕飯作りますけど何か好きな物あります?やっぱりお肉ですか?
宮尾美也
それとも、私を食べてみます?
最上静香
おまえにとって何が幸せなんだ。本当にそれで良いのか。
宮尾美也
要らないものは要りませんし。欲しい物は欲しいです。
宮尾美也
もし、私のこれを、こんなものを本当に欲しがっている人がいたら、
宮尾美也
そういう人が持っているべきだと思いませんか?それに、私だってそれでもらえるものがあります。
最上静香
……お嬢様に誂えたような存在だ。おまえは。
宮尾美也
生きていればこういう事もあるんですね。あ、そういえば……
宮尾美也
あなたは何が欲しくて、何がいらないんですか?
(台詞数: 50)