高木社長
「さて、勝負事である以上はルールがあるわけだが…。」
周防桃子
社長さんがそう言うと、小鳥さんがホワイトボードにさらさらと、そのルールを書き込んでいった。
高木社長
①自分の持ち歌を歌えるのは全試合通して1回のみとする。
高木社長
②勝敗は、あらかじめ厳正な抽選で選んだ200人の観客による投票で決まる。
高木社長
③第一回戦、準決勝の対戦相手は、そのつど抽選で決定する。
高木社長
④出場者は、プロデューサーへの相談等一切禁止。
周防桃子
うん、①はわかる。AS組の人たちは桃子たちより先輩だから、持ち歌が多いもんね。
周防桃子
②も問題はないね。固定のファンが入ってこれないから、本当に実力勝負ってだけ。
周防桃子
③は…対戦相手はそれぞれその時になってみないとわからないってこと、かな?
周防桃子
④…お兄ちゃんへの相談禁止、ね。うん、まあ…仕方ないよね。
高木社長
「それでは、第一回戦の組み合わせも決めてしまおう。」
周防桃子
今度は、小鳥さんが上に丸い穴が空いた箱をもってきて、社長さんに渡した。
高木社長
「この中に、番号が書かれたボールが入っている。出場者は、それを引いてくれたまえ。」
周防桃子
小鳥さんが、さっきのルールの下に、1ー2、3ー4、5ー6、7ー8と数字を書いている。
周防桃子
なるほど。つながっている数字同士が対戦相手ってことだね。
周防桃子
よし、一番最初に引くんだ。ここで桃子のやる気を見せるんだ!
周防桃子
さっき弱気になった自分にカツを入れようと、桃子が前に出たところ…。
周防桃子
同じように前に出てきた静香さんとかち合った。
最上静香
「桃子、先にどうぞ。」
周防桃子
静香さんが、桃子に先をゆずってくれて。
周防桃子
まあ、先に引いても後に引いてもあまり変わらないし、ここは桃子が引かせてもらおうかな。
周防桃子
天の神様の言うとおり、ってやつで。
周防桃子
…とりあえず、「り」のときに手にふれたボールを引っぱりだしてみた。
周防桃子
引いたボールは…3番。まだ、これが良いのか悪いのかは、わからないけど。
周防桃子
次は、当然静香さんの番。桃子もその場でくじが引かれるのを見て…。
最上静香
「…4番です!」
周防桃子
…4番!?なんか、いきなり相手が決まっちゃった…。
最上静香
「よろしくね、桃子。」
周防桃子
「うん。桃子、負けないよ?」
周防桃子
後ろに、春香さんと千早さん、このみさんが並んでいたので、短い言葉を交わしただけ。
周防桃子
それでも、静香さんからあふれる自信とやる気を十分に感じることができた。
周防桃子
静香さんか…強敵だね。歌がすごい上手で、桃子とたった3歳ちがいとは思えない大人びた人。
周防桃子
そして、その後にくじを引いた春香さんは7番。千早さんは1番。このみさんは6番。
周防桃子
3人がくじを引き終わると、今まで遠慮していたのか、後ろから琴葉さんが進み出てきて。
周防桃子
…8番。相手は、春香さんだ。これで決まったのは2組。
周防桃子
そして、昴さんに励まされながら、可憐さんが前に出てきた。相変わらず、オドオドしてる。
周防桃子
…せっかく選ばれたんだから、もっと堂々としていればいいのに。まあ、やる時はやる人だけどさ。
周防桃子
引くまでに少し時間がかかったけど、可憐さんのボールは5番。相手は、このみさん。
周防桃子
…これで、全部決まった。
周防桃子
桃子対静香さん、春香さん対琴葉さん、このみさん対可憐さん。
周防桃子
…でも、みんな考えていたのは、全然別のことだったと思う。
周防桃子
それは、かんたんな消去法。ジグソーパズルの残された最後の1ピース。
周防桃子
それなのに、パズル本体より人目をひきつける、輝かしい1ピース。
周防桃子
『如月千早VS星井美希』
周防桃子
小鳥さんがホワイトボードに書いた字が、何よりもあざやかに、桃子の目に写った。
(台詞数: 45)