深緑の夜宴
BGM
bitter sweet
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-01-17 10:18:48

脚本家コメント
宿れ灯火。
前作 閉店後
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/1300000000000031424/seq/422

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最上静香
「……ごめん、余計な事を訊いたみたいね」
北沢志保
「別に、そうじゃない」
北沢志保
「私の中で答えが出ていないだけ」
最上静香
「そう……。お砂糖、いる?」
北沢志保
静香はテーブル横にある容器から角砂糖を取り出し、私に訊ねた。
北沢志保
「ん、貰う」
北沢志保
黒い液面に落ち崩れる結晶。
北沢志保
その様をぼんやり見ながら静香はぽつりと呟いた。
最上静香
「……人にはそれぞれ考え方がある、か」
北沢志保
「ん?」
最上静香
「いや……ね、そうね。答えなんて簡単に出ないわよね」
北沢志保
急によそよそしい。
北沢志保
「勘違いかも知れないけど、悩みなら聞くわよ?」
最上静香
「そ、そう?」
北沢志保
「ええ」
最上静香
「あの、ふと可奈から聞いた話を思い出したのだけど、ここには店長が居たのよね?」
北沢志保
「え? ええ」
北沢志保
予想外の話題に戸惑う。
最上静香
「私たちと歳が変わらなそうな女の子って聞いたけど」
北沢志保
「まあ、そうね……。それで?」
最上静香
「私、今日久しぶりにあなたに会って、昔と比べて随分献身的というか、丸くなったなと思ったわ」
北沢志保
「ねえ、さっきから質問の意図がまったくわからないのだけれど」
最上静香
「じゃあ単刀直入に訊くけど」
最上静香
「志保、その人が好きなの?」
北沢志保
「ぶっ」
北沢志保
思わず噴き出しそうになる。
北沢志保
「ごほっごほっ……は?」
最上静香
「って、可奈が言えって」
矢吹可奈
「ああっ、そこで私の名前出したら」
北沢志保
「…………可奈、後で個人的に話をしたいから首を洗って待ってて」
矢吹可奈
「は、はひ……」
北沢志保
ホールケーキ完食間近、可奈の手は遂に止まった。
北沢志保
――――――
最上静香
「さて、と。夜も更けてきたし、そろそろ御暇しましょうか」
矢吹可奈
「うえぇ~ん! 私の珈琲だけ豆ダイレクト~!」
最上静香
「すごく、芳ばしそうね……」
北沢志保
「外は暗いし、送るわよ?」
最上静香
「ご心配なく。可奈もいるし、それにお店の片付けもあるんでしょ?」
北沢志保
「……そ、わかったわ」
最上静香
「ほら、可奈行くわよ」
矢吹可奈
「うえぇ~ん!」
北沢志保
叫ぶ可奈を引っ張り、静香は店の扉を開ける。
最上静香
「あ……」
北沢志保
「?」
最上静香
「あ、ううん、なんでもない。じゃあね」
北沢志保
そう言って、意味深に店を後にした。
北沢志保
そして間もなく、扉のベルが鳴り響く。
北沢志保
「どうしたの? 忘れも……の……」
北沢志保
今ではどこか懐かしい、時間がゆっくりになっていく……この感覚。
北沢志保
少女は私の顔を見ず、ただ沈痛な面持ちで、その場に立っていた。

(台詞数: 50)