温もりと繋がりを求めて。
BGM
Catch my dream
脚本家
イッパイアッテサ
投稿日時
2015-09-15 21:19:02

脚本家コメント
昨日の誕生日には投稿できなかったので、
静香メインのドラマを書いてみました。
静香の「背景」は、コミカライズも含めて徐々に描かれてますが、見えてこない部分もまだまだ有るかと。
ということで、一部勝手に想定して書かせていただきました。

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最上静香
……父のことは尊敬している……つもりだ。
最上静香
父は多忙な人だ。夕食はほぼ毎日自宅で摂るが、食事以外は書斎に籠っていることが多い。
最上静香
書類を持ち帰り、作成と確認をしている……と、母から聞いている。
最上静香
結婚した当初からそんな生活が続いているとも聞いた。ということは、もう十何年ものことだ。
最上静香
父は、家に集うことで『家族の務め』をしているつもりなのだろうが……
最上静香
父は、家に集うことで『家族の務め』をしているつもりなのだろうが……それが正しいのか。
最上静香
ひとつ屋根の下。だけど私達の間を、ドアと壁が阻む。それを家族と呼ぶべきなのか。
最上静香
……頭では分かっているつもりだ。父はひたすらに働き、『父』であろうとしている。
最上静香
でも理解したくは無い。顔を向かい合わせる事、心を通わせる事を削って、『家族』たれるのか。
最上静香
……幼い頃、父と触れ合った思い出。年末のことだったと思う。
最上静香
食後の父の手を掴み、無理矢理、テレビに流れる歌手の歌真似を披露したこと。
最上静香
幾許か心の余裕が有ったのだろうか。父は私に付き合って、拍手までしてくれた。
最上静香
……そういう、なにか特別な『きっかけ』が無ければ、交流が持てない間柄。
最上静香
……きっとその前提から、普通の家とは違っているのかもしれない。
最上静香
物心つくころには、父に披露するのは習い事のピアノに移行していた。今では、それすら、無い。
最上静香
……私自身、そんな、粛々と『務めを果たす』父に似ていたのかもしれない。
最上静香
勉学に励み、学校で委員となり、家では習い事……『良い子』を、務めようとしていた。
最上静香
……アイドルになるという突拍子もない挑戦。それは、『良い子』に行き詰まりを感じたから?
最上静香
それとも、幼き日の思い出を再現して、父との繋がりを感じたいから?
最上静香
……多分、両方なんだろう。
最上静香
一時の気の迷い。父はそう考えているのだろう。だから、私がアイドルで在るのは、その一時だけ。
最上静香
その一時を、喪うことも浪費することも許されない。だから頑迷と言われても、務め上げなければ…
高坂海美
「もっがみ〜ん、お待たせ〜!」
最上静香
「ヒャッ、冷たい!……海美さん、何するんですか?」
高坂海美
「いや〜、冷やしうどんを作ったからね!首筋でも堪能してもらおうかなって!」
最上静香
「器をいきなり、押し当てないでください!台本、落としちゃったじゃないですか!」
高坂海美
「台本って、もがみんのバースデーライブ、夜からでしょ?まだ時間あるし大丈夫だって。」
最上静香
「時間が有るからこそ、読み込んでるんです。特別なライブですから、完璧にこなさないと……」
ジュリア
「まあ、そうつっけんどんになるなって。シズが真摯に仕事に向き合ってるのは分かるが……」
ジュリア
「メシを食う時間も削っちゃ、パフォーマンスが落ちるぞ。あたしと海美からのプレゼントだ。」
最上静香
「……お二人が、おうどんを作ったんですか?」
高坂海美
「『作った』って言っても、四国のお土産を茹でて、付いてた出汁を注いだだけだけどね〜。」
ジュリア
「そうでもなきゃ、シズ相手にうどんなんて出せねえよ。そういう訳で、不味くはない筈だ。」
高坂海美
「だけど、もがみんも抜けてるねー。私達がキャラバンでどんな仕事してるか、知らなかったり?」
最上静香
……恥ずかしながら、その通りだ。私は自分のことばかりで、周りを見てないのかもしれない。
最上静香
……家族である父のことでさえ。父が現在、どんな事業に向き合ってるかも、知らない。
ジュリア
「しかしシズみたいなお嬢様育ちが意外だねぇ。うどんが好きになるエピソードでも有ったのか?」
最上静香
「それは……」
最上静香
……母が出掛けた、日曜の昼。慣れない様子で、台所に立つ、父。
最上静香
……ザク切りの葱しか載っていない、掛けうどん。今日のお昼は、食卓に丼ふたつだけ。
最上静香
……市販の麺に市販のつゆ。何の素っ気もない、特別なお昼ご飯。
最上静香
父なりの精一杯で満たされた、その一杯を食べた記憶。きっとそれが、私の原風景で……
最上静香
……
最上静香
「……何にも無いですよ。美味しいから、好きなんです。」
ジュリア
「……そうか。まあ、他人の好みを詮索しやしないけどな。」
最上静香
……
最上静香
……もしかしたら、父との繋がりを阻むものは、私の心に在るのかもしれない。
最上静香
素直な心を表して、婉曲ではなく父に言葉を伝えたなら……私にとっての『父』は、変わるのかも。
最上静香
いきなりは無理かもしれない。でも、仲間と触れ合う中で……私は変われるのかもしれない。
最上静香
父に一杯のおうどんでも差し入れて、温もりを求める言葉を口に出せるようになれれば……きっと。

(台詞数: 50)