伊吹翼
(デートの後、家に帰ってからずっと...胸がムズムズする...)
伊吹翼
(夜ご飯の味も、シャワーの温度も...ほとんど感じない...)
伊吹翼
...なんだろ...この感じ...
伊吹翼
(ぼーっとして...心に穴が空いたみたいな...でもさみしくはない...)
伊吹翼
...プロデューサーさん...
伊吹翼
(スマホの写真フォルダを開く...その中の一枚をビューモードに移した。)
伊吹翼
(ちょっと童顔で、オシャレで...笑い方がすこし子供っぽい人。)
伊吹翼
(でも、マジメでやさしくて、たまに切なそうな顔をする...つかみ所のない人...)
伊吹翼
?「翼~、入るよ~?」
伊吹翼
わっ!? お、お姉ちゃん?
伊吹翼
(お姉ちゃんが入ってくる...わたしはいそいでクッションにスマホを隠す...)
伊吹翼
お姉ちゃん「調子はどう? ...なんかずっと上の空って感じだったから、気になっちゃって。」
伊吹翼
大丈夫だよ♪ ...ちょっとダンスのフリのことで、考えてただけだから!
伊吹翼
お姉ちゃん「...ホントにそう? 私にはそんな単純な問題に見えないんだけど...」
伊吹翼
お姉ちゃん「お姉ちゃんね、翼がアイドルだってこと、すごく自慢に思ってるのよ。」
伊吹翼
お姉ちゃん「私に出来ることなんて少しだけだけど...それでも翼の力になりたいの。」
伊吹翼
お姉ちゃん...ありがとう...実は今日のことなんだけど...
伊吹翼
ある人と一緒にダブルデートしにいったんだけどね...
伊吹翼
わたしを置いてもう一人の子と盛り上がっちゃって...それでね...
伊吹翼
その二人がすごくカップルみたいで...わたしの見たことのない表情をするの...
伊吹翼
それを見たらね...ずっとここのところがムズムズして...なんだかさみしいの...
伊吹翼
ねぇ、お姉ちゃん...わたし...変になっちゃったのかな...?
伊吹翼
(お姉ちゃんは真剣な顔でだまっていて...その後、ちょっと笑って言った)
伊吹翼
お姉ちゃん「なるほどね...翼もそんな年頃になっちゃったか...」
伊吹翼
お姉ちゃん「翼、そのムズムズとかの正体なんだけどね...」
伊吹翼
お姉ちゃん「翼...」
伊吹翼
お姉ちゃん「翼...その人に『恋』しちゃってるんじゃない?」
伊吹翼
『恋』...そうなのかな...?
伊吹翼
お姉ちゃん「ええ、だってそうじゃなきゃ、ケータイを私に隠したりしないでしょ?」
伊吹翼
(...バレてたんだ...お姉ちゃん、家族の中で一番、カンが鋭いからなぁ...)
伊吹翼
お姉ちゃん「...翼、多分だけどね。 その人の事をあんまりよく知らないんじゃない?」
伊吹翼
そ、そんなことないもん...プロデューサーさんは優しいし、マジメだし...
伊吹翼
お姉ちゃん「でもそれはその人の一部だけ、でしょ? ホントの姿はまだわからないんでしょ?」
伊吹翼
お姉ちゃん「...嫉妬しちゃうわよね。 好きな人が違う人と仲良くしてたら。」
伊吹翼
お姉ちゃん「でもね、それはその人が、翼の好きな人の事をよく知ってるからよ。」
伊吹翼
お姉ちゃん「翼にはこれからもっと、その人の事を知っていく必要があるの。」
伊吹翼
でも...あんまりそういう事聞いていったら...嫌われちゃったりしないかな?
伊吹翼
お姉ちゃん「大丈夫よ♪ 翼みたいな女の子に聞かれて、嫌な顔する子はいないわ。」
伊吹翼
お姉ちゃん「なんたって、翼は私たちの一番カワイイ妹なんだからね?」
伊吹翼
(お姉ちゃんはわたしの頭をなでてくれた...わたしの好きなキレイな手で...)
伊吹翼
ありがとう、お姉ちゃん! わたし、がんばってみるから!
伊吹翼
お姉ちゃん「その意気よ! ...お兄ちゃんには内緒ね? 多分、その人が危なくなるかも。」
伊吹翼
う、うん...気をつけるね...!
伊吹翼
(お姉ちゃんはお休み、と言ってドアを閉じた...やっぱりお姉ちゃんはすごい。)
伊吹翼
...うん、明日からもがんばろーっと♪
伊吹翼
(いつの間にか、胸の奥のモヤモヤはすっきりしていた。)
(台詞数: 46)