私達は、今!~side J
BGM
プラリネ
脚本家
イッパイアッテサ
投稿日時
2016-05-03 14:06:34

脚本家コメント
今更ながら、3rdライブのあの曲を題材にとったドラマです。
前作は翼が語るプロローグ的でしたが、今作はジュリアにがっちり語らせるドラマです。
私が描くジュリアは、結構べらんめぇになってるかもしれませんが、どうかご容赦を。

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ジュリア
……ソロパートが始まった。とは言っても、あたしがライブで『ソロ』になることは、まず、無い。
ジュリア
大抵は『相棒』とステージに上がるからだ。……アイドルになる前からの長い付き合いの、こいつ。
ジュリア
あたしのギター。出番直前には自分の手で最高の状態に仕上げる。あたし自身の喉と同じように。
ジュリア
『相棒』と同伴。眼の下にはパンクソウルを顕す星。ダンスなんて、微塵もしない。
ジュリア
……こんな『ソロ』をするアイドルは、あたし以外には劇場には居ない。たぶん余所にも居ない。
ジュリア
「あたしをロックシンガーじゃなくて、アイドルにしちまった負い目からか?」
ジュリア
以前プロデューサーに、そう尋ねた事もある。ゲスかったもんだ。どんな反応を期待してたんだか。
ジュリア
「……俺は、ライブが最高になるのを狙っているだけだ。最適解を選んでいるだけさ。」
ジュリア
ってのが、あいつの回答だった。……狡い言葉の選び方だぜ。あいつは一枚上手だ。
ジュリア
ふん、まあいいさ。それが求められてるって言われているなら、全霊を以って応えるまで。
ジュリア
全体曲でも『ソロ』でも、あたしはやり遂げる。……衣装やダンスは、まだ恥ずかしいけどな。
ジュリア
だからこそ、出番前の『相棒』との語らい合いは大事だ。シンガーとしての自分の、再確認。
伊吹翼
「ねえジュリアーノ!今日のギターはオシャレだよね。練習用のとは違うんだ。」
ジュリア
(……それなのに、なんでこのタイミングで話しかけてくるんだお前は。勘弁してくれよ。)
ジュリア
「……悪いがツバサ、いまコンセントレーション高めてるんだ。付き合ってられねぇぞ。」
伊吹翼
「コンセント……あ、私コンセントたくさん使っちゃってゴメンね。私のヘアアイロン使う?」
ジュリア
「だから、喋ってられねって言ってるだろうが!!……あたし、そろそろ出るぜ。」
ジュリア
……このまま喋ってたら、コンディション整わねえ。少し早いが、ステージ裏に行っちまおう。
ジュリア
……そうだ。今日のあたしの『ソロ』は、あたしのためだけの時間じゃない。
ジュリア
あたしが歌ったあとのサプライズ。劇場でたった一回披露しただけのあの歌を、演奏する。
ジュリア
自分達の手で紡いだ歌を唄える喜び。音楽を志す者には、史上のもの。
ジュリア
ここで披露することで、今後のCDとかに繋げられるかも。そんな打算があるのは……否定しない。
ジュリア
だがそれ以上に、歌と向き合う者として、しっかり奏で上げてえんだ。それは、歌への礼儀だ。
ジュリア
……今日の『アイル』は、完璧にやってみせるぜ。
ジュリア
「舞台、温っためておくからな。後はキメろよ、ツバサ。」
ジュリア
「まあ、お前が詰まっちまったら、あたしが歌ってやり遂げてやるさ。任せとけ。」
伊吹翼
「……」
ジュリア
……
ジュリア
(……言い方がキツかったか?)
ジュリア
楽屋から舞台裏までの、近くて遠い通路。あたしはさっきの自分の言葉を反蒭していた。
ジュリア
『アイル』は失敗できない。メインボーカルを乗っ取ってでも歌い切る。間違ってるとは思わねぇ。
ジュリア
だが……そもそも『アイル』は、ツバサを自由に飛び立たせたくて、無理やって紡いだ歌だ。
ジュリア
それなのに、本番前にあたしが自分でツバサを萎縮させかねねぇ言い草をしちまうとは、な……
伊吹翼
……歌が終わったら、ケータリング食べようね!ナポリタン美味しそうだったよ。」
真壁瑞希
「伊吹さんは余裕ですね。……
ジュリア
通路の向こう側から、あいつらのお喋りが聞こえてきた。……なんちゅう事を喋ってんだか。
ジュリア
……違うな。あたしの方が、あたしの考えに凝り固まっているんだ。
ジュリア
『勝算なんてなくたって構わない』なんて書きながら、自分の創った作品が受けることを願って、
ジュリア
『賞賛だってなくたって構わない』って言いながら、パフォーマンスが成功する事ばかり考えて。
ジュリア
あたしは……アイドルだ。今日集ってくれた観客を喜ばせることこそ、大切だ。
ジュリア
『アイル』は……あたし『達』の歌だ。自分達が楽しめないのに、人を楽しませることができるか。
伊吹翼
……
ジュリア
あたしの後ろには、たぶんツバサがいる。なんとなく感じる。
ジュリア
ふふっ。本番前に気付かせてくれて、サンキューな。あたしはアイドルとして、先に歌ってくるぜ。
ジュリア
だから敢えて、振り返って手を振ったりはしない。前だけ向いて、舞台に挑む。
ジュリア
それくらいの格好つけはさせてくれよな。……いまさっき切った見得に相応しくなるように。
ジュリア
リフトが上昇していく。ここから先は暫く、あたしと『相棒』、そして観客の時間だ。
ジュリア
それが終われば、あたしとギター、ツバサとミズキ、観客……それと契機をくれた、あいつの時間。
ジュリア
それじゃあ、みんな、いくぜ。
ジュリア
……『プラリネ』。

(台詞数: 50)