伊吹翼
「ーー初級編おしまい♪」
伊吹翼
「CHU♪」
伊吹翼
わたしが歌い終わると、会場の皆からたっくさんの歓声が上がる。
伊吹翼
「応援ありがとー!」って言いながら、わたしは手を大きく振った。
矢吹可奈
「翼ちゃ~ん!とっても可愛かったよ~!」
伊吹翼
と、舞台袖からわたしの前に曲を歌った可奈ちゃんが姿を現した。
伊吹翼
「可奈ちゃんのおまじないも、とても素敵だったよ♪」
矢吹可奈
「本当!上手く歌えたかな~って不安だったんだ~♪」
矢吹可奈
「皆さん、私たちの歌はどうでしたか?バッチリかな~?やれたかな~?」
伊吹翼
可奈ちゃんの問いかけに、黄色とオレンジのサイリウムが揺れている。
伊吹翼
皆を盛り上げられたみたいで、わたしも嬉しかった。プロデューサーさんは褒めてくれるかな?
矢吹可奈
「みなさん!今日は何の日か知ってますか~!」
伊吹翼
可奈ちゃんがMCを始める。可奈ちゃんの問いに、お客さんが「翼ちゃんの誕生日」って答える。
矢吹可奈
「大正解~!お客さんの皆に100点満点のプレゼント~!」
伊吹翼
「あはは、それじゃクイズ番組みたいでしょ?それに、今日はわたしのバースデーライブだよ?」
矢吹可奈
「はうっ!」
伊吹翼
わたし達のやり取りで、お客さんの笑い声が聞こえる。笑顔が、会場の端っこまで見える。
伊吹翼
春香さんの言ったとおり、ここは皆の顔がちゃんと見える。
伊吹翼
今日はわたしの誕生日。
伊吹翼
バースデーライブをしたいって言ったのはわたし。ステージに立てば、皆の笑顔がみられるから。
伊吹翼
プロデューサーさんは目を白黒させたけど。自分からお仕事したいって言うイメージ無いのかなぁ?
伊吹翼
「みんなー!わたしの誕生日を覚えててくれてありがとー!!」
伊吹翼
気を取り直して精一杯手を振ると、お客さんも黄色のサイリウムを振って返事をしてくれた。
矢吹可奈
「わ~♪黄色いサイリウムがとってもキレイ!キラキラきれいでキレキレ翼ちゃん~♪」
伊吹翼
音程のちょっぴりズレた可奈ちゃんの歌い声。
矢吹可奈
「お客さんの皆さん、お願いします!」
伊吹翼
…がピタッと止まる。可奈ちゃんはお客さんに何をお願いしたの?
伊吹翼
少なくとも、わたしの台本にはそんなこと書かれてなかった。
伊吹翼
「ねぇ、次は2人の曲じゃなかったっけ?」
伊吹翼
「ねぇ、次は2人の曲じゃなかったっけ…うわっ!」
伊吹翼
わたしの質問が終わる前に、変化があった。会場の明かりが消えて真っ暗なった。
矢吹可奈
「……」
伊吹翼
…腕に可奈ちゃんがひっついてる気がする。恐いなら真っ暗にしなかったらいいのに。
矢吹可奈
「や、やっぱり明かりを点けて下さい~!」
伊吹翼
可奈ちゃんのお願いで、会場が再び明るくなる。
伊吹翼
ただ、それはさっきと違って、上からの照明では無くて…。
伊吹翼
「うわぁ…!キレイ…」
伊吹翼
お客さん皆が、真っ赤なサイリウムを照らしてくれていた。
矢吹可奈
「えへへ、可奈特製サプライズースデーケーキはどうかな~?喜んでくれたかな~?」
伊吹翼
皆が点けてくれた真っ赤なサイリウムは、ロウソクの代わりらしい。
矢吹可奈
「翼ちゃん、思いっきり息を吹きかけてみて!ロウソクの火を消さないと!」
伊吹翼
可奈ちゃんに言われて、わたしはお客さんに向けて思いっきり息を吹いた。
伊吹翼
最前列中心のサイリウムが消えて、そこから広がるように順番に赤が消えていく。
伊吹翼
全てのサイリウムが消えて、再びステージの明かりが点く。
矢吹可奈
「私とファンの皆と考えたんだけど…どうだった?」
伊吹翼
少し照れた様子でわたしに感想を訊いてくる。照れてるのは、暗くして自分が怖がったからかな?
伊吹翼
答えは考えなくても大丈夫!これ以外にあり得ないんだもん。
伊吹翼
わたしは可奈ちゃんにぎゅっと抱きついた。突然すぎて何が何だか分かってないみたい。
伊吹翼
感想を待ってるお客さんの方を向く。そして、今日一番の笑顔で…。
伊吹翼
「さいっこーに嬉しかったよ!可奈ちゃん、みんな、ありがとー!!」
(台詞数: 50)