伊吹翼
わたしの誕生日にその招待状は届いた。
伊吹翼
宛名を見るとステーキ店からのようだった。
伊吹翼
そのお店に覚えは無いがどこかの会員特典かなにかで来たのだろう。
伊吹翼
事務所で開かれる誕生日パーティーは夜からだ。昼なら予定は開いている。
伊吹翼
よし、ランチを食べに行くか。
伊吹翼
招待状に書いてある住所は街外れだった。
伊吹翼
行ってみたらそこはなかなかオシャレなお店だった。
伊吹翼
お店に入ると店長が出迎えてくれた。
伊吹翼
招待状を見せると店長はにっこり笑い「最高の肉」を用意しました、と言ってくれた。
伊吹翼
席に着きしばらくすると見るからに美味しそうなお肉が続々と運ばれてきた。
伊吹翼
料理を口に運ぶ。
伊吹翼
美味い。こんなに美味しいお肉は初めてだ。
伊吹翼
他の肉料理にも手をつける。
伊吹翼
どれも美味しい。やはりお肉が絶品だ。
伊吹翼
私は料理を全て平らげた。
伊吹翼
お店を出るとき店長が見送りをしてくれたのであのお肉はどこの物か、と聞いてみた。
伊吹翼
店長は「あのお肉はあなたの為だけに用意した特別な物です」
伊吹翼
「あなたにしかあのお肉の味は理解出来ません」と言った。
伊吹翼
なんか良く分からないが悪い気はしなかった。
伊吹翼
お店を出てしばらく歩いたあと何気なく振り返るとお店の姿は見えなかった。
伊吹翼
そんなに歩いたつもりは無かったが…
伊吹翼
しかし美味しいお肉を出す店だ。今度はプロデューサーさんと来ようと思う。
伊吹翼
夜、事務所に行ってみると騒然としていた。
伊吹翼
突然プロデューサーさんと連絡が取れなくなり足取りも分からないらしい。
伊吹翼
わたし達は総出で行方を捜したが見つからないまま時間だけが過ぎて行った…
伊吹翼
…数日経ってもプロデューサーさんは行方不明のまま。警察も情報が無くお手上げらしい。
伊吹翼
わたしは気分転換にあのお店に行ってみる事にした。
伊吹翼
しかしお店があったと思われる場所は何も無い荒れ地だった。
伊吹翼
呆然と立ち尽くすわたしはふと気付いた。
伊吹翼
あのお店の名前は何だっただろうか…
伊吹翼
思い出せない…いやそもそも知っていたのだろうか…
伊吹翼
あのお店はいったい…
伊吹翼
それからかなりの月日が過ぎた。
伊吹翼
未だにプロデューサーさんは行方不明。
伊吹翼
事務所のみんなもわたしも新しく来たプロデューサーと共に忙しい毎日だ。
伊吹翼
だがどんなに時間が経とうとも…
伊吹翼
あのお肉の味は忘れられない…
(台詞数: 37)