病んで恋歌。
BGM
朝焼けのクレッシェンド
脚本家
sikimi
投稿日時
2017-08-20 18:54:50

脚本家コメント
とある曲のタイトルから思いついたドラマ。
内容はベターだけど安直じゃない…と思いたい。

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田中琴葉
照明を落とした部屋。窓からは夕日が、燃えるようなオレンジ色で差し込んで来るのが分かる。
田中琴葉
お盆も過ぎたというのに、気温は依然高いまま。だというのに私はベッドで布団にくるまって。
田中琴葉
「けほっ…けほっ…ぐずっ。」
田中琴葉
夏風邪に、完膚なきまでに打ちのめされていた。
田中琴葉
原因は分かっている。昨日、レッスン終わりにカラオケに行って帰る途中…。
田中琴葉
思いっきり、夕立に巻き込まれた。それだけならまだよかったのだけど。
田中琴葉
雨と汗で濡れて、流石に気持ち悪かったのでお風呂に入ることにして…。
田中琴葉
レッスンの疲労からか、気が付いたら一時間近く、お風呂で眠ってしまっていた。
田中琴葉
あわててお風呂から出たけど時すでに遅し。見事に風邪をひいてしまった。
田中琴葉
ちなみに、一緒にカラオケに行った皆は誰一人夕立にあってないらしい。なんか不公平。
田中琴葉
そして今に至る。ついさっきまでたっぷりと眠ってたせいで、倦怠感はあっても全然眠くない。
田中琴葉
早く寝なくちゃなのに…とか思いながら布団の中でころころしていると、不意に扉をノックする音。
田中琴葉
「お母さん?汗かいちゃったから背中拭いてほしいんだけど…」
田中琴葉
声をかけると、ガチャリと扉が開く音。…あれ?そういえばお母さんまだ帰っこない時間…。
田中琴葉
扉が完全に開く。そこに立っていたのはお母さんじゃなくて…。
田中琴葉
「ぷ、プロデューサー!?ど、どうしてここに…?」
田中琴葉
プロデューサーの姿が、そこにはあった。思わず、顔から火が出そうになる。
田中琴葉
どうやら、私のお見舞いに来てくれたらしい。右手には買い物袋を下げていた。
田中琴葉
枕元まで近づくと、袋からスポーツドリンクを取り出して手渡してくれる。
田中琴葉
「あ、あの…私、ずっと寝てたから汗かいてて、それで、匂いが…あの、だから…」
田中琴葉
自分自身何を言っているのか全く分からない。恥ずかしいとか色んな感情がない交ぜになってる。
田中琴葉
…でも、その感情の中にはプロデューサーがお見舞いに来てくれて、嬉しい自分もいた。
田中琴葉
「体調の方ですか?はい、今日は一日中寝てたから少しは楽になりました」
田中琴葉
「体調の方ですか?はい、今日は一日中寝てたから少しは楽にけほっ…」
田中琴葉
「…すみません、ちょっと見栄を張りました。やっぱりあんまり楽になってないかもです。こほっ」
田中琴葉
「…俺に何かできることはないか、ですか?そんな、わざわざ来てもらったのにそんなこと!」
田中琴葉
私が言うと、「それじゃお見舞いに来た意味がないだろう」と返されてしまった。…確かに。
田中琴葉
何かしてもらえること…と少し考えたところで、随分汗をかいてたことを思い出した。
田中琴葉
「えっと…それじゃあそこのタンスから、タオルと代えのパジャマを持ってきてもらえますか?」
田中琴葉
言うと、プロデューサーはぎょっとした表情を浮かべた。私自身も普段なら絶対にお願いしないし。
田中琴葉
…今は風邪をひいてるんだから、ちょっとくらい普段しないことをお願いしてもいいよね。
田中琴葉
「そこです。その引き出しに替えのパジャマがあって、上にタオルがあります。」
田中琴葉
私がじっとプロデューサーを見つめると、根負けした様子でタンスの取っ手に手をかける。
田中琴葉
「そこです。その引き出しに替えのパジャマがあって、上にタオルがあります。」
田中琴葉
「あっ!そ、そこは開けちゃダメ!!そこは乙女の秘密ですっ!!」
田中琴葉
そんなやり取りをしながら、プロデューサーは私の着替えとタオルを持って着てくれた。
田中琴葉
それをベッドの上に置くと、「着替え終わるまで廊下にいるよ」とプロデューサー。
田中琴葉
待ってください!と出て行こうとするプロデューサーを引き留めると…。
田中琴葉
「あの、背中を拭いてもらえませんか…?」
田中琴葉
「だ、大丈夫です。恥ずかしいですけど、プロデューサーの事好…信頼してますから」
田中琴葉
……十数分後、部屋には着替え終わった私とプロデューサー。二人とも顔は真っ赤っか。
田中琴葉
照れ隠しなのか、プロデューサーは大げさにビニール袋を漁って、中からアイスを取り出した。
田中琴葉
二人で分けられるタイプのアイス。それを分けると、片方を私に手渡してくれた。
田中琴葉
ぱくっ。冷たいアイスが火照った体に沁みる。体も頭も、少し冷静になってきて…。
田中琴葉
…私、なんてことをプロデューサーに頼んだの!?は、恥ずかしいっ!!
田中琴葉
ちらりとプロデューサーの方を見ると、プロデューサーと目が合ってしまう。
田中琴葉
気まずそうにお互い顔をそむけて、思わず笑ってしまった。
田中琴葉
そのままアイスを食べきると、ふあ…と小さくあくびが。そろそろ帰ろうか?とプロデューサー。
田中琴葉
「あの、帰る前に…私が眠るまで、そばにいてくれませんか?」
田中琴葉
「プロデューサーが手を握ってくれていたら、きっとすぐに元気になります。だめ…ですか?」

(台詞数: 50)