所恵美
…………。
所恵美
…………体が、重い。
所恵美
まるで何日も体を動かしてなかったみたい。両手足どころか、全身が鉛に包まれてるみたい。
所恵美
……体が、重い?
所恵美
磁石でくっついてるみたいになかなか剥がれてくれない瞼を無理やり開くと、真っ白な天井。
所恵美
清潔感溢れる白と、眩しい位の蛍光灯の明かりが目に沁みる。
所恵美
どうやらアタシは仰向けで眠っていたらしい。
所恵美
寝起きの頭で、ぼんやりとした思考を無理やり働かせる。今、アタシは何処にいるのか。
所恵美
えっと、確かアタシは元の体に戻ろうとしてて…。
所恵美
えっと、確かアタシは元の体に戻ろうとしてて…あ。
所恵美
意識がはっきりとしてきた。目が覚める直前まで、アタシの全てを願いにして、祈っていた。
所恵美
体が重たい、ということは今アタシは実体がある体に入っているはず。ということは…。
所恵美
「…もど、れた?」
所恵美
たぶん、だけど。アタシは今、アタシの体に戻っている。鏡を見ない限りはっきりしないけど。
所恵美
上半身を起こそうとして、何かが乗っかっているのか重たかったので頭だけ起こしてみる。
所恵美
直前までお世話になっていた、真の姿の死神がまだいるかもしれないと思ったけど…。
田中琴葉
「めぐ、み…すぅ…」
所恵美
死神はいなかったけど、アタシの体に突っ伏して眠っている琴葉がいた。
所恵美
琴葉が目を閉じてても分かる。たぶん、入院してるアタシ以上に酷い顔をしてる。
所恵美
知らない人が見れば、どっちが入院患者なのか分かんないくらいの酷い顔。
所恵美
「…そんなに心配かけちゃってたのか。ごめんね、琴葉」
所恵美
琴葉の頭をそっと撫でる。そこまで気が回ってないのか、髪の触り心地もあんまりよくなかった。
所恵美
右手で琴葉の頭を撫でながら部屋を見渡す。やっぱり、死神の姿は見えなかった。
所恵美
「見えなくなったのか、もう帰っちゃったのか。お礼、言いそびれちゃったなぁ…」
所恵美
アタシが呟くのと同時に、病室に扉がスライドする音。扉の方に首を向けると。
島原エレナ
「…メグミ?」
所恵美
「…おはよ、エレナ。どうしたのさ、エレナもすっごい顔してるよ」
所恵美
幽体離脱してる間は部屋にいたはずのエレナが帰って来た。顔を洗ってきてたみたい。
島原エレナ
「…ホントに、メグミ、だよね…?」
所恵美
「…うん。正真正銘のアタシ、所恵美だよ」
島原エレナ
「メグミ～!!!」
所恵美
ガバッ!っと、勢いよくエレナが抱き着いてくる。
所恵美
ガバッ!っと、勢いよくエレナが抱き着いてくる…眠ってる琴葉を巻き込んで。
田中琴葉
「っ!?な、なに!?敵襲!?」
所恵美
「ちょ、ま、エレナストップ!いだ、いだだだだっ!!よくわかんないけど体のどこかが痛い!!」
田中琴葉
「え、なに!?よ、よくわかんないけどエレナ!?恵美が痛がってるからやめてあげて!!?」
田中琴葉
「…恵美!?目が覚めたの、恵美!!」
島原エレナ
「良かった…良かったヨ～!!コトハ、メグミが起きたんだヨ!!」
所恵美
「ああもうエレナ、涙と鼻水でアタシの服ぐちゃぐちゃなんだけど!!」
所恵美
「あと琴葉、できれば喋らないでほしいかも!!息が胸にかかってくすぐったいから!!」
田中琴葉
「め、めぐ…むきゅぅ」
所恵美
「こ、琴葉が気を失った!?か、看護師さーん!!」
所恵美
……アタシの目覚め、ぐだぐだである。
所恵美
でも、このぐだぐだ感と賑やかさは嫌いじゃない。やっぱりアタシは皆が大好きだ。
所恵美
……さっきの騒動からしばらくして、何かに気づいたらしいエレナがアタシに問いかける。
島原エレナ
「ねえ、メグミ。ずっと握ってた左手から何か見えてるけど…何持ってるノ?」
田中琴葉
「ちょっと見せてもらってもいい?…これ、穴の開いた硬貨よね。しかも文銭が6枚?」
所恵美
何でこんなものを握ってたの、アタシ…って思った時、声が聞こえた気がした。
所恵美
『それはあたいからの贈り物だよ。正式に三途に来た時まで大切に持っときな』
所恵美
…意味はイマイチ分からないけど、死神からのお守り、かな。色々ありがとね、死神さん。
(台詞数: 50)