ReRise第12話『私の再起』
BGM
ホントウノワタシ
脚本家
遠江守(えんしゅう)P
投稿日時
2017-04-08 22:52:08

脚本家コメント
Rの大文字がふたつなのは、再起する者が二人いるから。

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田中琴葉
予想通り…ううん、それ以上の出来だった。
田中琴葉
立ちつくす翼ちゃんの隣を通り過ぎて、私は舞台袖に戻る。
田中琴葉
…翼ちゃんも、少し苦しむかもしれないわね。私のように。
田中琴葉
でも、大丈夫。強い子だから、きっと立ち直れるわ。
田中琴葉
心の中でそう呟いて、私はステージを後にした。
田中琴葉
戻った私を出迎えたのは、恵美。そして、お腹に重い衝撃を感じて。
大神環
「ことはぁ…。」
田中琴葉
私の腰にしがみつくようにぶつかってきたのは、環ちゃんだった。
田中琴葉
二人とも、劇場の通常公演に出演していて、客席を温めてくれていた。
田中琴葉
私たちのステージを舞台袖から見ていたのは知っていたけど、何かあったのかな?
所恵美
「自分じゃ見えないよね。琴葉、これ。」
田中琴葉
恵美が手鏡を差し出してくる。怪訝に思いながらも、私はそれを覗き込んでみた。
田中琴葉
両目が血走って、まるで結膜炎のように赤くなっていた。
田中琴葉
ああ…毛細血管が。思ったより体に出てしまうものなのね。気を付けないと。
所恵美
「…アタシたちは、付き合いが長いから、琴葉のことはよくわかってるつもり。」
所恵美
「だから、今のも…琴葉が自分ぶっ壊しながら声を絞り出してるって、わかるんだよ!」
所恵美
「琴葉…!どうして…何がしたいのさ!?」
田中琴葉
そう…。二人とも、私のことを心配してくれているんだね。
田中琴葉
だったら、私の想いを伝えないと。たとえ、解ってもらえないとしても…。
田中琴葉
「…正々堂々と挑んで、思いっきり負けて…それで清々しい気持ちになって。」
田中琴葉
「勝てなかったのは、自分の実力が届かなかったから。次はもっと頑張ろうって思っていたわ。」
田中琴葉
春香ちゃんとの試合の後、自分の中に積み重なっていった想いを、少しずつ言葉にしていく。
田中琴葉
「でも、他の人を見ているうちに、それが自分への誤魔化しだって気付いたの。」
田中琴葉
「知恵の限りを尽くして立ち向かう人。自分の実力以上のものを発揮する人。」
田中琴葉
「誰もが、自分のやり方で自分の力を尽くして、挑んでいたわ。」
田中琴葉
「私は…彼女たちに比べたら、真摯でも誠実でもなかった。」
田中琴葉
頭に浮かぶのは、一人は小柄の、もう一人は長身の女性のイメージ。
田中琴葉
「…もう一度機会を貰ったとき、決めたのよ。」
田中琴葉
「今度は、私の全てを尽くしてみせるって。」
所恵美
「そんな…!だからって、体を壊すまでやるなんて、無茶苦茶じゃんか!」
田中琴葉
「体の痛みなんて…。後悔に身を焼かれ続けるのに比べれば、何でもないわ。」
所恵美
「止めるよ…!プロデューサーに言って、止めるから!」
田中琴葉
食い下がる恵美に、私は首を横に振った。
田中琴葉
「無理よ…。私はもうステージに立ってしまったから。」
田中琴葉
「ステージの外に立っている人では、たとえプロデューサーであっても、私を止められない。」
田中琴葉
「ただ同じステージ立つ人だけが、私を止めることができるのよ。」
田中琴葉
…それが、アイドルというものだから。
大神環
「ことは…ことはぁ!」
田中琴葉
ただ私の名前を呼ぶことでしか想いを口にする術の無い、環ちゃんの頭をそっと撫でて。
田中琴葉
私は腰に絡んだ小さな手を、できるだけ優しく引き離す。
田中琴葉
かけがえのない友だちを振り切って、私は自分の我儘を通す道を選んだ。
田中琴葉
…さあ、行こう。
田中琴葉
リベンジなど考えてはいない。そもそも勝ち負けなど関係ない。
田中琴葉
私はただ、真摯に、誠実にありたいだけ。
田中琴葉
もう一度。そして、今度こそ。
田中琴葉
私は私のままで、私を曲げることなく、戦いぬいてみせる。
田中琴葉
これが、私の再起。
田中琴葉
もし、途中で身も心も燃え尽きたとしても。
田中琴葉
そこに白く清らかな灰が残ったとき、それが私の誠真さの証明となってくれる。
田中琴葉
…それもまた、いいわ。

(台詞数: 50)