田中琴葉
優等生と呼ばれるのが嫌だった。融通の利かない堅物と思われてるみたいで。
田中琴葉
アイドルになろうと思ったのも、そんな自分が少しでも変れたらいいと思ったから。
田中琴葉
けどやっぱり私はどこに行っても何をやっても優等生だって言われ続けて。
田中琴葉
「...向いてないって、思ったんだけどなあ。」
田中琴葉
やっぱり個性のない私には無理だから辞めさせてほしい。そう告げた時。
田中琴葉
「...それの何が悪いんだって、言ってくれたんだよね。」
田中琴葉
真面目なお堅い優等生。それだって立派な個性だ、そんなアイドルがいてもいいだろう。
田中琴葉
無理に変わろうとしなくていい、そのままの自分を磨いてアイドルをやっていけ。
田中琴葉
あの言葉で私は楽になれた。ここにいてもいいんだ、頑張っていいんだって。
田中琴葉
...それから、もうひとつ。
田中琴葉
「..プロデューサー。」
田中琴葉
「こんな私を受け入れてくれたあなたをいつの間にか、私は...」
所恵美
「...ニャハハ、照れるな照れるな二人とも。んで、きっかけは?」
田中琴葉
「おはようございますプロデューサー。恵美、何の話してるの?」
所恵美
「お、琴葉いい所にきたね~只今絶賛尋問中だよん♪」
田中琴葉
「じ、尋問...?」
所恵美
「いやあ昨日ぐーぜん見ちゃったのよ、この二人が手をつないで歩いてるとこ!」
所恵美
「ほれほれ、とっとと白状しなって。大丈夫、口止め料はドリンクバーでいいから...」
田中琴葉
「...」
田中琴葉
「レッスン行ってきます。恵美、あんまりいじめちゃ駄目よ?」
所恵美
「あれ、何よ。琴葉ったらノリ悪いなあもう。」
田中琴葉
変に思われただろうか。お祝いの言葉を掛けるか、冷やかすとかしないといけなかったのに。
田中琴葉
駄目だ。こんなのは私らしくない、優等生にふさわしくない。こんな事をすれば、きっと..
所恵美
「琴葉?」
田中琴葉
親友の声でふと我に返る。気づいたら劇場の外まで出ていたらしい。
所恵美
「その、さっきの事だけどさ。琴葉、もしかして...」
田中琴葉
..ほら、勘のいい彼女にばれてしまう。誰にも言わないつもりだったのに。
所恵美
「ゴメン!無神経にはしゃいじゃって。アタシ、その..知らなくて。」
田中琴葉
「いいのよ、気にしないで。ただの憧れみたいなものだったんだから。」
所恵美
「けど...」
田中琴葉
そう。気にしなくていい、しないでほしい。もめ事や気まずい思いはさせたくない。
田中琴葉
優等生はそんな事をしてはいけない。あの人がそれでいいと言ってくれた、優等生の私は。
所恵美
「あんまり無理しないでよ?愚痴とかならいつでも聞くからさ。」
田中琴葉
「ふふ、どうもありがとう。そうね、今日のレッスンの後でもいい?」
所恵美
「もちろん。じゃ、予定空けとくから終わったら連絡入れてよ。」
田中琴葉
「うん、分かった。それじゃあゴチになりま~す♪」
所恵美
「ええ、ずるくない!?まあ仕方ないか、ちゃっかりしてるね琴葉は。」
田中琴葉
「優等生だもの。」
所恵美
「関係なくないそれ?」
田中琴葉
...そんなことはない。だってほら、もうこうして明るく笑い飛ばせてる。
田中琴葉
これでいいんだ。湿っぽくなったり気まずい雰囲気にしてはいけない。
田中琴葉
私は、優等生なんだから。いつまでもずっと、このままで。
田中琴葉
...だけどもし、もしもだけど。前に思ったように優等生でない自分に変れていたのなら。
田中琴葉
ひょっとしてその時は、違う結果になっていたのだろうか?
田中琴葉
...止そう。そんな事考えても仕方ない。今の自分を受け入れたのは他ならぬ私なのだから。
所恵美
「あ、こんな時間か。琴葉、ぼちぼち行ったほうがいいんじゃないの?」
田中琴葉
「うん、行ってくる。それじゃ恵美、また後でね?」
(台詞数: 47)