田中琴葉
私には好きな人がいた。
田中琴葉
不器用で鈍感だけど、真面目で誰よりも私達のことを考えてくれる優しい人
田中琴葉
そんな貴方にいつしか私は惹かれ、いつも目で追っていた。
田中琴葉
最初はただ頼りがいのある大人の人、そんな風に誤魔化していた。
田中琴葉
でも、貴方が誰かと話しているだけで胸が苦しくなり、身の回りのことが手につかなくなって...
田中琴葉
その感情が恋だとわかるまで長い時間はかからなかった。
田中琴葉
でも、私には告白する勇気なんてなかった。だからあえて遠回しにこう聞いた。
田中琴葉
『もし、何年経っても私がアイドルでなくなっても....頼っても大丈夫ですか?』
田中琴葉
『もちろんだ、何かあったらいつでも琴葉の力になってやるからな!』
田中琴葉
....嬉しかった。その言葉で私は確信した。
田中琴葉
私のことをずっと何年も何十年も私のそばにいて支えてくれる
田中琴葉
少し前までは....そう、
田中琴葉
少し前までは....そう、思っていた
田中琴葉
....今日はバレンタイン、本当ならあの人にこの想いを伝えるだろう。
田中琴葉
でも....それはできない。 なぜなら、
所恵美
「プロデューサー!お待たせ!」
所恵美
彼は私の親友....恵美と付き合っているから....。
田中琴葉
彼がプロデューサーと付き合い始めたのは去年の12月、大晦日前だった。
田中琴葉
最初はみんな動揺を隠せないでいたが、次第に彼と恵美の仲を応援するようになった。
所恵美
「確かさ....今日は明日オフなんだよね!?」
所恵美
「それじゃ、ファミレスのドリンクバー付きでご飯食べて、その後はカラオケのオールだよ!」
田中琴葉
私の気持ちにとは裏腹に友人は明るく彼に話しかける。
所恵美
「未成年は夜中には入れない?....そっか、」
所恵美
「じゃあさ....プロデューサーの家に泊めてよ?」
所恵美
「ちなみにアニキはデート、両親は夫婦そろって旅行に行ったから大丈夫だよ!」
所恵美
「別にいいじゃん、どうせアタシ以外家にあげる予定ないんだからさ!」
田中琴葉
恵美は私とは違ってとてもストレートで積極的、私には真似できそうにないことばかりだ。
所恵美
「それにアタシ....もっとプロデューサーと特別な関係になりたいって....思ってる。」
所恵美
「今のままでも十分だけど....不安だから....アタシの事、愛してくれる?」
田中琴葉
答えてほしくない、聞きたくない、知りたくない。
田中琴葉
きっと聞いてしまったら親友に嫉妬を抱いて...醜くなってしまうから。
所恵美
....
所恵美
....な~んてね♪
所恵美
うん、この感じだと他の子に手を出すことはなさそう。 よかったよかった!
田中琴葉
なんだ....恵美はからかっていただけだったんだ....少し胸を撫で下ろしたら....
所恵美
「....でもこれだけは言わせて。」
所恵美
「....アタシが言ったこと、いつか本当になってほしいって....思ってるから」
田中琴葉
....ああ...私は勝てるわけなかったんだ。
田中琴葉
....あと一歩....踏み込まなかった弱虫な自分が憎い。
田中琴葉
あの時、私がはっきり『好き』と伝えていれば結果は違っていたかもしれない....。
所恵美
「気を取り直してプロデューサー、今日は楽しもうね!」
所恵美
「気を取り直してプロデューサー、今日は楽しもうね! もちろんオゴりでだけど!」
田中琴葉
....私はプロデューサーに渡すつもりだったチョコレートを胸に抱えていた。
田中琴葉
....手作りだけど他の子のとは違う、少し苦めのセミスイートチョコ
田中琴葉
....離れていく愛しい人と親友の背中を眺め、チョコレートの包装を開けた。
田中琴葉
....もう叶わない恋なのに、振り向いてほしくて....もどかしい。 そしてその背中に、
田中琴葉
「プロデューサー、恵美....おめでとう。」
田中琴葉
必死で作った笑顔で、私はプロデューサーに渡すつもりだったチョコレートを自分で食べた。
田中琴葉
涙で埋まるにじむ視界、塩気を感じるチョコレート。
田中琴葉
「私の初恋は、ここで終わったのだ。」
(台詞数: 50)