田中琴葉
もしもし、プロデューサー。
田中琴葉
ふふっ...。「もしもし」って言うのも変ですね。私の顔、きれいに映っていますか?
田中琴葉
あっ...!?すいません、きれいって、そういう意味じゃなくて...。
田中琴葉
映像は、クリアに映っていますか?...それなら、良かったです。
田中琴葉
はい。お仕事は無事終わりました。
田中琴葉
ホテルの方でも、特には。みんな、いい子にしてますよ。
田中琴葉
このみさんや莉緒さんは、引率役だから就寝時間までお酒は飲まないって。
田中琴葉
みんなの事は私も見てますし、恵美やエレナも手伝ってくれますから。
田中琴葉
だから、こちらは大丈夫です。安心してください。
田中琴葉
それより、プロデューサーの方こそ大丈夫ですか?
田中琴葉
ビデオチャットですから、見えてますよ。横にある、書類の山。
田中琴葉
あまり、根を詰めすぎないでくださいね。身体を壊したりしたら...嫌ですから。
田中琴葉
明日は帰るだけなので、詳しい報告は事務所に戻ってからにしますね。
田中琴葉
では、おやすみなさい。プロデューサー。
田中琴葉
また、明日。
田中琴葉
...
田中琴葉
......
田中琴葉
...何だろう。この胸を締め付けるような...寂しさは。
田中琴葉
今までだって、何度も繰り返してきたのに。
田中琴葉
「おやすみなさい、また明日」って...。
田中琴葉
別に二度と会えなくなるわけじゃない。なのに、どうして...?
田中琴葉
無機質なデスクトップを映すディスプレイに、手を伸ばした。
田中琴葉
あの人の顔、頬があった場所をなぞっても、手に返るのは平面の固さと機械の温もりだけ。
田中琴葉
...ああ、成程。わかった。解ってしまった。
田中琴葉
呼び止めたくても、追いかけようとしても叶わない。あなたはそこに居ない。
田中琴葉
遥かな距離の実感。隔絶というもの。それが圧し掛かってきて。
田中琴葉
声が聞きたい。その息遣いを、あなたを感じたい。
田中琴葉
...あなたに、会いたい。
田中琴葉
今すぐ。闇に塗り潰された道、幾千万歩の距離を駆け抜けてでも。
田中琴葉
胸を貫く衝動に、私は震える身をかき抱きながら、耐えなければならなかった。
(台詞数: 30)