田中琴葉
わあ……新しい劇場は、ファンタジーのイメージなんですね。思わず見入っちゃいました。
高木社長
はっはっは!どうかね琴葉くん。我々は夢を提供するのが仕事だからね、頑張ってみたよ。
田中琴葉
これ程の舞台を頂けるのですから、今まで以上にアイドル活動に励みたいと思います。
高木社長
うむ。琴葉くんならそう言ってくれると思ったよ。期待しているぞ。
田中琴葉
でも……あの、下世話なお話をして申し訳ないのですが……
田中琴葉
この規模のリニューアルですから……大幅な投資をされたのでは?回収に貢献できるかどうか……。
高木社長
……あ、これは要らぬ心配をさせてしまっているようだ。大丈夫だよ、今までの利益で賄えたし……
高木社長
実はこの建物、ツテを辿って、閉鎖されたテーマパークの建材をかなり流用しているのだよ。
高木社長
バブル期に開園して、その後閉鎖された施設は少なからず有るからねえ。まあ、一つの潮流だよ。
田中琴葉
……それで、なにか『歴史』が有りそうで、それでいて『作り物』のような雰囲気だったんですね。
田中琴葉
……かつてテーマパークだった頃、ここを訪れた人も、ここで働いていた人も、夢を見ていて……
田中琴葉
……その閉園とともに、その夢も消え去ってしまったのかもしれませんね。
高木社長
そうだねえ……でもこうして、そのテーマパークの一部は、再び夢を提供する場に生まれ変わった。
高木社長
かつての『住人』達の夢を引き継ぐ……と言うのはおこがましいが、巡り合わせかもしれないねえ。
高木社長
……
大神環
社長〜!ことは〜!ただいま〜!
高木社長
おお、環くんご苦労様だねえ。そうだ、環くんに誕生日プレゼントをあげないと……
大神環
えー?社長からはもうプレゼント、もらってるぞ!
大神環
こんな大きなげきじょうなら、探検しほうだいだぞ!しばらく遊べそうだ!
田中琴葉
ふふっ、環ちゃんったら。劇場をプレゼントだなんて、自由な発想ね。
大神環
そうだ。ことは、げきじょうの柱のすきまで、この箱を見つけたんだ!
大神環
ふたもしてあるし、きっと宝ばこだぞ!開けてみようよ〜!
田中琴葉
可愛らしい箱ね。……でも宝箱じゃないわ。『Time Capsule』って書いてあるから。
大神環
たいむかぷせる、って何?
田中琴葉
未来に残したい物や手紙をね、丈夫な箱とかに入れて保管しておくの。未来に開けるために。
高木社長
……うーん。信じがたいことだが、建材に紛れて運ばれてきて、埋め込まれたのかもしれないねえ。
田中琴葉
誰かがテーマパークに埋めていったのでしょうか……いつか、取り出して開けることを思いながら。
大神環
ことはー!箱が開いたぞ!なにか紙が入ってる!
田中琴葉
もう、環ちゃんったら。埋めた人に返すかもしれないから、大事に扱わないと……
田中琴葉
……
大神環
……どうしたの、ことは?
田中琴葉
……多分途中で、蓋が緩んじゃったのね。中に水が染み込んじゃってて……
田中琴葉
せっかくの手紙が……ボロボロになってて、ほとんど読めないの。
高木社長
残念だが、これでは到底持ち主を特定できそうにないねえ。
高木社長
と言ってこの事を公表しても……カプセルが駄目になったことを知って、埋めた人は失望するかな。
田中琴葉
……テーマパークと一緒に、この人の一つの夢も、駄目になったのかもしれませんね。
大神環
なんでふたりともガッカリしてるの?
大神環
ほら、手紙のさいごのぶぶんはよめるぞ!『……楽しんでください。』、だって!
大神環
これを埋めたひとのゆめは、『楽しむ』ことだよね!じゃあ、たまき達が、かわりに楽しもうよ!
大神環
そうすれば、ちょっとは「くよう」になるんじゃないかな?たまき、まちがってる?
田中琴葉
……そうね。誰のどんな『夢』だったかは分からないけど……
田中琴葉
これを見つけた私達は、その夢の一部だけでも叶えてあげられるかもしれないね。
高木社長
アイドルは、世界に夢を与えるもの。でも、それ以前に、一人の人間として……
高木社長
自分が楽しみ、自分の夢を叶えるべきかもしれない。……今日は環くんに教えられた気分だよ。
(台詞数: 44)