田中琴葉
「エレナ、サンバカーニバルお疲れ様。すごく楽しいイベントだったよ。」
島原エレナ
「ありがとうネ、コトハ!カーニバルは大好きだけど、いちから計画するのは大変だったヨ。」
所恵美
「しかし、お客さんは面食らっただろうね〜!去年までは演奏会だったのに、今年はサンバだし。」
島原エレナ
「それもそうかもネ。劇場のみんなもビックリしてたシ。リツコやチハヤがあんな顔するなんテ。」
田中琴葉
「去年は、私がフルート、二人はヴァイオリン……ね。あれはあれで無謀な挑戦だったけど。」
所恵美
「まあそりゃ、アイドルだからさ。普通の人より音楽に慣れ親しんでるってことでしょ。」
島原エレナ
……
田中琴葉
……
所恵美
……
島原エレナ
(思い出したヨ……。昔ワタシ、ピアノ教室に通ってたんダ。すぐに辞めちゃったケド。)
田中琴葉
(音楽の話で思い出しちゃった。中学に上がる前まで、ピアノ教室で習ってたんだ。)
所恵美
(そっか。アタシ、昔ピアノ教室に行ってたんだ。ピアノよりおしゃべりの方が楽しかったっけ。)
島原エレナ
(……ガイジンのワタシが仲間外れにならないよう、友達が出来るといいって考えだったのカナ。)
田中琴葉
(あの教室はピアノの練習や発表会だけじゃなくて、クリスマス会とかもやってたなあ。)
所恵美
(ピアノ教室のクリスマス会、楽しかったなあ。プレゼントやお菓子を持ち寄ってさあ。)
島原エレナ
(ピアノ教室のクリスマス会、ママンが張り切って、ブラジルのお菓子を作ってくれたヨ!)
田中琴葉
(クリスマス会のときは、変わった料理やお菓子も並んでたっけ。)
所恵美
(会が始まるまえに、並んでるケーキが美味しそうとか、プレゼント何が欲しいとか喋ってたよ。)
島原エレナ
(ワタシ、テーブルにママンの自慢のお菓子、並べたヨ。他の子より目立ってたかナ。)
田中琴葉
(会が始まる前に、外国人の子、だったのかな?見たことないお菓子を並べたの。その時に……)
所恵美
(外国の子がお菓子を並べてたの見て、思わず言っちゃったんだ……)
所恵美
(『あ!ガイジンが、ヘンテコなお菓子持ってきた!』……てね。)
島原エレナ
(……お菓子を並べてるときにネ。『ヘンテコなお菓子』だって言われた気がしたヨ……)
島原エレナ
(ママンが一生懸命作ってくれて、本当に美味しいのニ……ちょっと悲しかったネ。)
田中琴葉
(『ヘンテコなお菓子』って聞いちゃったからかな。結局私、そのお菓子は食べなかったと思う。)
所恵美
(……嫌なこと言うつもりは無かったんだ。ただ、ビックリして何の気なく言っちゃっただけで、)
所恵美
(今の私なら『何だか面白そうなお菓子』とか、別の言い方してるけど……コドモだったからさ。)
島原エレナ
(……ママンのお菓子、ほとんど残っちゃったヨ。会が終わった後持って帰ったケド……)
島原エレナ
(そのことママンには言えなくて、部屋に隠して自分で全部食べてごまかしたッケ……)
田中琴葉
(……その子が、ほとんど残ったお菓子を持って帰るの見て、本当に悪いことをした気になった。)
所恵美
(みんなお菓子食べなかったのは……アタシの声のせい、だよね。それしか考えられないし。)
島原エレナ
(居づらくなって、ピアノ教室はそのあと辞めちゃったヨ。サッカーやりたいって言ってネ。)
田中琴葉
(……その後、ピアノ教室でその話題は出なかったと思う。その子も、教室に来なくなったから。)
所恵美
(あの時の話は、誰もしなかったけど……その子が居なくなったのが辛くって、教室辞めたよ。)
島原エレナ
(……ワタシ、その後自分を変えたヨ。周りに溶け込むより、『変わった子』でい続けようト。)
島原エレナ
(イントネーションも訛りを残しテ。髪も染めテ。『変なガイジン』のほうが、楽だから。)
田中琴葉
(その後私は、意識するようになったの。偏見や差別なく、真面目に公平にあろうって。)
田中琴葉
(……融通利かないとか、委員長体質とか言われるけど……あんなことを二度としたくないから。)
所恵美
(アタシ、もう二度と友達や仲間を傷つけない。仲間を楽しませたいし、頼まれたら断らない。)
所恵美
(まあ、仲間のこと優先で、勉強も将来の進路も危ないけどね。それでも、仲間を優先するよ。)
島原エレナ
(……あんな事言ったの、メグミじゃないヨ。メグミは誰かを傷つけること言わないカラ!)
田中琴葉
(あの外国の子は、エレナじゃない……と思う。髪の色も違うし、引っ込み思案っぽかったから。)
所恵美
(あの場には、琴葉は居なかったんだよ。アタシを止めるか、エレナをフォローした筈だからね。)
島原エレナ
(でも、本当にモシモ……あの時二人と一緒だったら……二人は引きずってるカモ。)
田中琴葉
(でも、もしもこの三人が一緒に居たなら……私がなんとかするべきだったのに、申し訳ないよ。)
所恵美
(でも、……あの場にエレナと琴葉が居たなら、アタシ、二人と友達で居続けていいのかな。)
島原エレナ
「なんだか、三人とも黙っちゃったネ!カーニバルなんだし、楽しもうヨ!」
田中琴葉
「ゴメンね、ちょっと思い出したことが有って……。三人一緒なのに、考え事してちゃダメね。」
所恵美
「……そうそう!アタシ達三人は、……友達、だからさ!」
(台詞数: 49)