田中琴葉
あ、プロデューサー、お待ちしていました。
田中琴葉
もう、誘った本人が遅れてきてどうするんですか。
田中琴葉
それに、こんな時間に女の子に外を出歩かせるなんて、男性としてどうかと思いますよ?
田中琴葉
………
田中琴葉
………ふふ、冗談です。
田中琴葉
ちょっと意地悪してみました♪ごめんなさい。
田中琴葉
プロデューサー…私、プロデューサーに誘ってもらえた時、とても嬉しかったです。
田中琴葉
本当に、涙が出そうなくらい嬉しかったんですよ?
田中琴葉
それが今は緊張で、心臓の鼓動がプロデューサーに聞こえそうなくらいドキドキしてて……。
田中琴葉
誘ってくれて、本当にありがとうございます。
田中琴葉
いきなり湿っぽい空気になっちゃいましたね。
田中琴葉
せっかくですので、少し歩きませんか?
田中琴葉
ーーーーーーー
田中琴葉
梅の花が綺麗ですね……。
田中琴葉
それに夜空にはまんまるのお月さん。
田中琴葉
こんな素敵な夜に、プロデューサーと一緒にいられるなんて、まるで夢のようです……。
田中琴葉
……………
田中琴葉
『春もやや 気色調ふ 月と梅』……。
田中琴葉
『俳聖』と呼ばれた松尾芭蕉の句です。
田中琴葉
おぼろに霞む月の光と梅の花のほころびから春の訪れを感じ取り、これを詠んだそうですよ。
田中琴葉
本来は目に見えない『春』を、景色の移り変わりから感じ取るなんて……
田中琴葉
よくよく考えたら、私たちも普段から同じことをしてるんですよね。
田中琴葉
他の季節も同様に、蝉を見れば夏を感じ、紅葉を見れば秋を感じ、雪を見れば冬を感じ……
田中琴葉
私たちも知ってか知らずか、季節を周りの情景から感じ取ってるんです。
田中琴葉
そしてそれは、人の心も同じだと思うんです。
田中琴葉
形のないものを知るには、何かを介せば、それは自分の中で感じ取ることができるんです。
田中琴葉
そう、今の私がプロデューサーを介して感じてるように……。
田中琴葉
……な、なんか難しい話になってしましたね。自分でも何言ってるんだか。
田中琴葉
さて、そろそろ戻りましょうか。まだ夜は寒いですし
田中琴葉
さて、そろそろ戻りましょうか。まだ夜は寒いですし くしゅん!
田中琴葉
……あ、ジャケット……。
田中琴葉
いいんですかプロデューサー?今度はプロデューサーが冷えちゃいますよ?
田中琴葉
そうやっていつも人の心配ばかりして、自分のことは疎かにするんですから……。
田中琴葉
そういうことなら……
田中琴葉
そういうことなら……えいっ(ピト)
田中琴葉
ふふふ、こうやって私が少しくらいは温かくなりますよね?
田中琴葉
顔、赤くなってますよ。
田中琴葉
…………。
田中琴葉
あの……あの、しばらくこのままでいいですか……?
田中琴葉
〈この時、私の鼓動がいつもより激しかったのは言うまでもない〉
田中琴葉
〈それはきっとプロデューサーにも伝わっていただろう〉
田中琴葉
〈でも……それでプロデューサーが私の気持ちを感じ取ってくれれば嬉しいな〉
(台詞数: 42)