田中琴葉
志保ちゃん、誕生日おめでとう!これは私からのプレゼント……受け取ってもらえるかな。
北沢志保
ありがとうございます、琴葉さん。……あの、この薄い包みは、絵本……ですか?
北沢志保
正直に言いますと、今日一日でたくさん頂いたもので。今日中には全部持ち帰えれないかも。
田中琴葉
そうね、本は重なると重たいから。私もちょっと配慮が足りなかったかな。
田中琴葉
でも、それは『絵本』じゃないの。包みだけでも開けてもらえないかしら。
北沢志保
はあ……
北沢志保
はあ……これは、参考書、ですか。
田中琴葉
うん。私が高校受験のときに使ってたね。書き込みがあるけど、それも為になるかなって。
田中琴葉
志保ちゃんもお仕事が忙しくなってるだろうから、お仕事以外の支援になればいいかなって。
北沢志保
……
北沢志保
琴葉さん。これを贈っていただいておきながら、言うべきことではないかもしれないですが……
北沢志保
私、高校に進学するかどうか、考えようかと思ってるんです。
北沢志保
進学すればそれだけ経済的な負担が掛かりますし。時間的な拘束も有ります。
北沢志保
社長さんのツテで芸能科の推薦を探してもらうかもしれませんが……
北沢志保
それが叶わないなら、もっと高みを目指すため、芸能活動に邁進するも一つの考えかと思うんです。
田中琴葉
それは……経済的なことなら奨学金制度もあるし、進学をネガティブに考えすぎじゃないかしら。
北沢志保
琴葉さん自身も、学生生活と芸能活動の両立は大変なんじゃないですか?
田中琴葉
否定は出来ないけど、それでも今の生活が嫌なわけじゃないよ……
北沢志保
傲慢な言い方ですけど、私は芸能界でやって行けると思います。進学はさしてメリットがないかと。
所恵美
えぇー!志保、高校に行かないの?頭いいんだし、もったいないじゃん。
田中琴葉
恵美!いきなり声かけられたら、びっくりするじゃない。
所恵美
ゴメンゴメン。二人が話してるのが聞こえてきたからさ、アタシ気になっちゃて。
所恵美
んで、志保。高校行かないかもってのは、マジな話?
北沢志保
恵美さんみたいな高校生活を見てると、なんだか人生で遠回りをしてる感じもしますし。
田中琴葉
ちょっと志保ちゃん、それは言い過ぎだよ。
所恵美
シンラツだねえ、志保。まあ確かに、ある意味時間と学費をムダ遣いしてるのかもね。
田中琴葉
恵美も、そんな言い方しなくても……
所恵美
だけどさ。アタシ、地元に中卒で就職したり高校中退したりしたマブダチもいてさ……
所恵美
ほとんどみんな、高校に行けばよかったって言うんだよね。もっと遊びたかったって意味も含めて。
北沢志保
そう……なんですか。
所恵美
さっさと社会に出るのがオトナだとか、授業受けてもタメにならないとか考えちゃうけどさ。
所恵美
それがそもそも、コドモの発想なんじゃない?
所恵美
色んなこと体験して、色んなこと知ってさ。自分で取捨選択して道を選べるのがオトナだって。
所恵美
三年間、遊んで友達作って勉強して、それから将来考えてもいいんじゃない?モラなんとか期間で。
北沢志保
高校生活は、モラトリアム期間。そういう考え方ですか?
所恵美
まあ、将来見越してマジメに勉強してる人には失礼な言い方かもしれないけどね。
所恵美
……アタシは志保の親でも先生でもないからさ。聞き流してくれてもいいよ。
北沢志保
……いえ。私にはそんな風に言ってくれる『姉』は居ませんでしたから。お話し、嬉しいです。
北沢志保
それと琴葉さん。さっきはあんな言い方して、すみませんでした。
田中琴葉
志保ちゃんの将来は、志保ちゃんが選べばいいわ。参考書使わないなら、他の子にあげてもいいよ。
北沢志保
いえ。琴葉さんの思いが詰まってますから。大事にします。
所恵美
よかったじゃん、琴葉『お姉ちゃん』。出来のいい妹でさ。
田中琴葉
ふふっ、恵美ったら。ところで恵美『お姉ちゃん』のプレゼントは、何なの?
所恵美
……あのさあ、今ちょっとお小遣いピンチなんだよね。今度ファミレス奢るからさ、待っててよ。
北沢志保
……今日あいさつに来てくれなかったのは、その負い目が有ったからなんですね、恵美お姉ちゃん。
(台詞数: 45)