田中琴葉
…………話終えた私は、いつの間にか涙を流していた事に気が付いた。
田中琴葉
今だから、涙を流せる。少しだけ、素直になれたから。
田中琴葉
でも、素直になってしまった分、今まで麻痺していた黒い感情が流れ込んでくる。
田中琴葉
涙が止まらない。
田中琴葉
先輩は死んだんだ、と今まさに実感してる。
田中琴葉
そして、紗織里先輩の気持ちが痛いほどに分かる。
田中琴葉
私も、先輩のもとへ……
田中琴葉
『なぁ……志継』
田中琴葉
「…………なに?」
田中琴葉
『そこから……出られるか?』
田中琴葉
私は、顔を上げ辺りを見渡す。由雄くんの言った意味、つまりこの部屋から出ろという事だ。
田中琴葉
「それは……」
田中琴葉
外に出る、そう意識しただけで体は重くなる。
田中琴葉
『無理……か?』
田中琴葉
「…………」
田中琴葉
沈黙を肯定と受け取ってくれるまで、少し時間が必要だった。
田中琴葉
ただただ、沈黙が流れる。
田中琴葉
ガタっ、と何かの物音と微かに聞こえる深呼吸。
田中琴葉
『…………1つだけ約束しろ』
田中琴葉
「…………?」
田中琴葉
『夏の駅伝大会までには出てこい』
田中琴葉
あと、1ヶ月……。
田中琴葉
カレンダーを見て、○がついてる日付を確認する。8月の終わりだ。
田中琴葉
まだ、先輩が生きてたころに、私も楽しみにしていたころにつけた印。
田中琴葉
『俺は、その大会で必ず走る。約束する』
田中琴葉
「自信は?」
田中琴葉
『そんなもん、ねーよ』
田中琴葉
「……だと思った」
田中琴葉
『だから……応援に来てくれ』
田中琴葉
「私、大島高校のマネージャーだよ?」
田中琴葉
『関係ねーよ。約束、したからな?』
田中琴葉
「勝手だなぁ……でも、いいよ」
田中琴葉
「約束、する」
田中琴葉
それまでに、強くなる。
田中琴葉
『……待ってる』
田中琴葉
どっかの誰かさんと同じ様な台詞を言う。
田中琴葉
……そして、ここから予想を遥かに越える過酷な日々が待っていた。
(台詞数: 37)