Melody in scape
BGM
Melody in scape
脚本家
むびょーちゃん
投稿日時
2016-09-20 02:51:12

脚本家コメント
後編
前編はこちら
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/1000000000000007904/seq/181

コメントを残す
佐竹美奈子
――どのくらいここにいただろう。
佐竹美奈子
指先が悴んで感覚が鈍い。
佐竹美奈子
(風邪ひく前に帰ろう……)
佐竹美奈子
来た道を戻るべく踵を返そうとして――何かにぶつかった。
佐竹美奈子
『こんなところで何してるんだ、美奈子』
佐竹美奈子
頭上からの声に視線を上げる。
佐竹美奈子
「プロデューサーさん……」
佐竹美奈子
いつまで経っても事務所に現れない私を迎えに来たのであろう。
佐竹美奈子
心配そうに私を見下ろすプロデューサーさん……その視線が、私の胸にチクッと刺さった。
佐竹美奈子
「こ、こんなところで会うなんて奇遇ですね!うちでご飯でも食べていきますか!?」
佐竹美奈子
「今なら無料で大盛りサービス中です!デザートに杏仁豆腐だって付けちゃいますよ!!」
佐竹美奈子
罪悪感に押し潰されないよう、堰を切って言葉があふれてくる。
佐竹美奈子
「ささ、上げ膳は急げと言いますし行きましょう!」
佐竹美奈子
この場から逃げ出そうとして――失敗した。
佐竹美奈子
「あっ……」
佐竹美奈子
力強くはない。けど振りほどくことなんてできない強さで――
佐竹美奈子
プロデューサーさんに包み込まれていた。
佐竹美奈子
「プロデューサー、さん……?」
佐竹美奈子
『……すまなかった』
佐竹美奈子
突然の謝罪の言葉。
佐竹美奈子
でもなぜ謝られるのかわからない……謝らなければならないのは私のほうなのに。
佐竹美奈子
『俺はいつも気づくのが遅いんだ……』
佐竹美奈子
『いや、初めから気づいてたのかもしれない。けど、忙しいのを理由に先延ばしにしていた』
佐竹美奈子
『これじゃあプロデューサー失格だな』
佐竹美奈子
「プ、プロデューサーさん……一体何の話」
佐竹美奈子
『――小さな町の定食屋で見つけたんだ』
佐竹美奈子
「…………」
佐竹美奈子
『その子は忙しい店内をまるで踊るように駆けまわってた――』
佐竹美奈子
『歌うようにオーダーを取って、極上の笑顔を振りまいてた――』
佐竹美奈子
『――俺には、そこがもうステージに見えたんだ』
佐竹美奈子
『その時俺は決めたよ。この子をプロデュースするって……』
佐竹美奈子
『辛い時もあるかもしれない。苦しい時もあるかもしれない』
佐竹美奈子
『言ってしまえば周りはみんな敵だ。孤独を感じることだってあるかもしれない』
佐竹美奈子
『そんな時はさ……』
佐竹美奈子
「……そんな時は?」
佐竹美奈子
『歌おう』
佐竹美奈子
思いもかけない答えにふと上を向く。
佐竹美奈子
プロデューサーさんと目が合った。
佐竹美奈子
――その目は、笑っていた
佐竹美奈子
「……歌、ですか?」
佐竹美奈子
『自分のその時の素直な気持ちをこれでもかってくらい詰め込んで、歌おう』
佐竹美奈子
『それがどんな気持ちであれ、想いを込めた歌は届くんだ』
佐竹美奈子
『届いて、伝わる。それが歌なんだ』
佐竹美奈子
『俺は相手の気持ちを察するのが下手だから、歌ってくれないか?』
佐竹美奈子
『今の美奈子の気持ちを込めて、歌を』
佐竹美奈子
後ろに回された手が離れ、トンッと背中を押された。その感覚が少し名残惜しい……
佐竹美奈子
ふと顔を上げると雨は上がり、雲の切れ間から光が差し込んでいた。
佐竹美奈子
『お。天使の皆さんも観客に来てくれたぞ』
佐竹美奈子
天使の梯子――そこに向って私は歌う。
佐竹美奈子
精一杯の感謝とちょっぴりの好きを込めて――

(台詞数: 50)