横山奈緒
……オーディションに落ち続けて……芸能人としての「取り柄」が無いのを実感して……
横山奈緒
逃げるみたいに、大阪の実家に帰ってしもうた……もう泣きそうやし、寝てしまお。
横山奈緒
……誰や、チャイム鳴らすんわ。お母さん、買い物袋持ってて鍵を取り出せんとか?
豊川風花
……
佐竹美奈子
……
豊川風花
こ、こんにちは、奈緒ちゃん。
佐竹美奈子
奈緒ちゃん、こんな家に住んでたんだね。はじめて知ったよ。
横山奈緒
風花、それに美奈子!なんでこんなところに居るん……
豊川風花
今日受ける筈だったオーディションに出ずに、奈緒ちゃんが居なくなったって聞いてね。
豊川風花
心当たりを探したけど駄目で、大家さんに頼んで鍵を開けてもらったら……
佐竹美奈子
服が無くなってたから。実家に帰ったのかもと思って。小鳥さんに住所を教えてもらったの。
横山奈緒
アハハハハッ! これはとんだ名探偵誕生やな!素晴らしい推理やで。
横山奈緒
……いや実はな、風邪気味やったから、お母さんに看病してもらおう思うて、帰ってきたんや。
豊川風花
……そんなこと、今までしたこと無かったじゃない。
佐竹美奈子
奈緒ちゃん……アイドル、辞めちゃうつもり、なの?
横山奈緒
……
横山奈緒
……だってしょうがないやん!二人と違うて、まともにテレビに出れたためしも無いし!
横山奈緒
オーディションは落ち続けるし!そもそも、私にはなんの「ウリ」も無いし!
横山奈緒
……もうええやろ。私もう、泣きそうやし。
豊川風花
……辛かったんだね、奈緒ちゃん。気づいてあげられなくて、ごめんね。
豊川風花
奈緒ちゃんはいつも明るくて、いい意味で悩まない子だと思い込んでたから……
佐竹美奈子
私達が選考に落ちても、むしろ励ましてくれてたから……頼りっきりだったのかもね。
佐竹美奈子
奈緒ちゃん、大阪から出てきて一人暮らしで、頼れる家族もいなかったのに……
横山奈緒
ウッ……ウウッ……
佐竹美奈子
……奈緒ちゃん。実は今日のオーディション、急病になったって誤魔化して、後日受けられるの。
佐竹美奈子
私達が練習に付き合うから……受けてみない?今度こそ大丈夫だよ。
豊川風花
プロデューサーさんがね、今度の役は是非奈緒ちゃんにって、頑張ってねじ込んでくれたの。
豊川風花
だから本当は、内定してるみたいなもの。あとは奈緒ちゃん自身が、やる気を見せればいいって。
横山奈緒
……プロデューサーさん、私のこと、みててくれたんやな。でもそれ、ちょっとズルやないん?
佐竹美奈子
「とにかく場数を踏ませたかったから、不向きそうな仕事のオーディションも受けさせてきて……」
佐竹美奈子
「それで失敗が続いて、奈緒を戸惑わせることになって申し訳なかった」、って。
佐竹美奈子
ほら、プロデューサーさんから、この手紙を預かってきたの。
横山奈緒
……
横山奈緒
……謝るなら、直接会いに来んかい、あのアホ!
佐竹美奈子
今日はいろいろ走り回ってたから……それは許してあげてね。
横山奈緒
……はぁーっ。
横山奈緒
そんな風に言われとるなら、この仕事に思いっきりぶつからなアカンやん。
横山奈緒
……明日の朝イチで帰って、ちゃんと謝らんとな。ついでにプロデューサーにも謝ってもらお。
佐竹美奈子
ふふっ。やっといつもの奈緒ちゃんらしい笑顔になったね。
豊川風花
……それとね。奈緒ちゃんに取り柄が無いってのは、間違いだと思うわ。
豊川風花
いつも私達を励ましてくれて、気分を良くしてくれてるの。それはカメラを通しても伝わる筈よ。
横山奈緒
そうかな……そうなんやろうね、きっと。
横山奈緒
私は私が持ってるもので勝負せなアカンし。自分で自分を信じてあげへんと、な!
(台詞数: 43)