佐竹美奈子
もし私が大学生になったら、四年間の学生生活の中で私はどんな体験をするのかな?
佐竹美奈子
もしかしたら恋人ができて、その人が生涯を共に過ごす人になるのかもしれない
佐竹美奈子
私の思い描いた夢のようなキャンパスライフは…
佐竹美奈子
「家を継げ」
佐竹美奈子
父のこの一言と共に崩れ落ちた、私の気持ちを伝える前に、全てが文字通り白紙になったのだ
佐竹美奈子
そんなお金も余裕もないと、夢を見る少女だった私に、親は現実を突きつけてきた
佐竹美奈子
その日から私は嘘を吐き続けている、周りにも、親にも、そしてなにより自分自身にも…
佐竹美奈子
嘘を繋ぎ続けたらそれはいつか本物になるから…とか、後は時間がどうにかしてくれるとか
佐竹美奈子
そんな言い訳をして、私は今日も偽物の気持ちを貫き通す
佐竹美奈子
進路希望の紙を白紙で出し続ける事が、私に唯一できる現実と親への反抗だった
横山奈緒
美奈子!
佐竹美奈子
え、なになに?
横山奈緒
なにって、せっかく百合子に会いに来たのに、何をぼけーっとしてるん?
佐竹美奈子
あっ、ごめんなさい!、百合子ちゃん、これ受け取って!
佐竹美奈子
…千羽鶴は平和の象徴だったり、長寿のシンボルだったりする
佐竹美奈子
折り鶴を千羽折ることで病気平癒が叶うという考えが一般的にあって
佐竹美奈子
私と奈緒ちゃんは平和・長寿の象徴である折り鶴を媒介して繋げた私達の願いのこもった
佐竹美奈子
千羽鶴を百合子ちゃんに手渡した
佐竹美奈子
私の抱える問題も、百合子ちゃんの抱える病気と一緒にどこかへ運んでいってくれたらいいのに…
佐竹美奈子
って百合子ちゃんの病気と私自身の問題を一緒にしちゃだめだよね
七尾百合子
いつもありがとうございます、奈緒先輩、美奈子先輩!
七尾百合子
…百合子ちゃんはベッドの上にいながら私達に深く頭を下げる
横山奈緒
いやいや、頭あげてや!逆に私らこんなことしかできひんくてごめんな
佐竹美奈子
そうだよ!私達が勝手にやってるだけだから!
七尾百合子
奈緒先輩と美奈子先輩にここまでしてもらって、私すごく嬉しいです!
横山奈緒
喜んでくれてよかったー♪てか先輩つけなくてええって、私ら幼馴染みやん!
七尾百合子
二人は私の大事な幼馴染みであり、同時に尊敬する先輩ですから!
七尾百合子
親しき仲にも礼儀ありともいいますし、なのでつけさせてください
横山奈緒
それなら…わかった!けどほんまつけへんくていいからなー
佐竹美奈子
なんだかこうやって三人だけで揃って話をしてるの懐かしいよね
七尾百合子
そうですね、昔はよく三人で秘密のおしゃべりとか言って話してましたよね
横山奈緒
確か私らの将来の話とかしたやんな、まあ小さいときの夢やし今とは違うと思うけど…
七尾百合子
確か私が小説家で、奈緒先輩は温泉旅館の仲居さんでしたよね
横山奈緒
せやせや!ほんま懐かしいわー!それで美奈子はたしか…家の仕事を手伝う…やったっけ
横山奈緒
…少し気まずそうに奈緒ちゃんが私に聞いてくる
佐竹美奈子
そ、そうだね!でもほら!私は実際家を継ぐことになるわけだから…
佐竹美奈子
私だけ小さいときの夢叶っちゃうね!
佐竹美奈子
…私は息を吐くように、自分の本当の気持ちを抑え込み、自分を偽る
佐竹美奈子
その全てが幼馴染みであり、親友の奈緒ちゃんに見透かされているのはわかっているけど…
佐竹美奈子
百合子ちゃんのいる前でそのことについて奈緒ちゃんが言及してこないのはわかっている
佐竹美奈子
お互いに百合子ちゃんに心配をかけて余計な負担をかけたくないのは同じだから
横山奈緒
ちょっと私、お花摘んでくるわ
佐竹美奈子
…奈緒ちゃんはそういって、化粧室のほうに小走りでいってしまった
佐竹美奈子
百合子ちゃんが私の瞳を見つめている、清廉潔白で透き通った彼女の瞳に…
佐竹美奈子
嘘つきの私はどう映っているのだろうか
七尾百合子
美奈子先輩、一つ聞いてもいいですか?
佐竹美奈子
百合子ちゃん、なにかな?
七尾百合子
どうして美奈子先輩は、ずっと泣いているんですか?
佐竹美奈子
えっ?
佐竹美奈子
…私には百合子ちゃんが何を言っているのかさっぱりわからなかった
(台詞数: 50)