横山奈緒
季節が秋に変わり、秋風が冷たい通学路を私は走っていた
横山奈緒
途中で勢い余ってぼーっとしている中等部の女の子にぶつかってしもたけど
横山奈緒
ほんまは心配やけど、大丈夫といってくれたので、私は先を急いだ
横山奈緒
あの子と同じ学年くらいの子やろか…
横山奈緒
私はそう思いつつ…幼馴染を待たせてるから走った
横山奈緒
私は高等部所属三年の横山奈緒です
横山奈緒
ちなみにダンス部に所属しています、もうすぐ引退することになるんやけど…
横山奈緒
二週間後の週末にある大会が私らのダンス部としての最後の舞台になるだろう
横山奈緒
大会に向けて高まる気持ちと緊張感
横山奈緒
それに今まで一緒にやってきた仲間達との最後の大会なんだとおもうと…
横山奈緒
少し寂しいような、複雑な気持ちになる
横山奈緒
でも最後だからこそ、今まで積み重ねてきた全てをこの仲間達と出しきりたい!
佐竹美奈子
もぉー、奈緒ちゃん遅いよ!
横山奈緒
ほんまごめん!…寝坊して遅刻してもうたわ…お昼なにか飲み物奢るから許して、美奈子!
横山奈緒
…私は両手を合わせながら必死に美奈子に謝罪した
佐竹美奈子
しょうがないなあ…今回だけだよ!…そんなことより奈緒ちゃん、早速練習しよ♪
横山奈緒
せやな、踊ろ踊ろ!!
横山奈緒
…ダンス部部長の私と、副部長の幼馴染み美奈子
横山奈緒
私ら二人はこうして朝早くにきては大会に向けて自分らで練習をしている
横山奈緒
今日は私が遅刻してもうたけど…いつもは早いんやで
横山奈緒
～昼休み～
横山奈緒
みーなーこー、はい、ジュース
佐竹美奈子
奈緒ちゃんありがとう!これで今朝の遅刻はチャラにするね!
横山奈緒
…お昼を食べ終え、折り紙で鶴を折っている美奈子が私に微笑む
横山奈緒
それじゃ、私も早速折ろかな
横山奈緒
…私ら二人はダンス部に所属している中等部三年の後輩であり、幼馴染みである
横山奈緒
百合子の為に千羽鶴を折るのが日課になっていた
横山奈緒
百合子は病気を患ってしまって、通学路の途中にあるでかい病院に春から入院をしている
横山奈緒
少しでも早く元気になるようにという祈りを込めて、私と美奈子は昼休みになると必ず鶴を折って
横山奈緒
千羽鶴が完成すると百合子のところに持っていっていた
佐竹美奈子
ねぇ、奈緒ちゃん
横山奈緒
どしたん?
佐竹美奈子
奈緒ちゃんは大会終わったらどうするの?
横山奈緒
どうするのって、私の進路のこと?
佐竹美奈子
うん、進学するのかなって
横山奈緒
私は進学すんで、大学にいっても、ダンスは続けよかなって思ってる
横山奈緒
美奈子は頭良いし、ずっと進学したいいうてたからするんやろ?
佐竹美奈子
私は…たぶん就職かな
横山奈緒
えぇー、そんなん、なんで急に…
佐竹美奈子
親にね、家の仕事を継げって言われて…それに私、料理自体は好きだからいいかなって
横山奈緒
でもずっと大学にいきたい言うてたやん…親に継げ言われたくらいで美奈子は進学を諦められるん?
佐竹美奈子
そ…それは
横山奈緒
ならちゃんと自分の気持ちは素直に親に言ったほうがいいって!!
佐竹美奈子
私の家の問題は奈緒ちゃんには関係ないでしょ!!
横山奈緒
…
横山奈緒
よぉーし!できた、これで千羽やろ
佐竹美奈子
うん、やっと完成したね、千羽鶴
横山奈緒
放課後部活が終わったら、早速持ってたろや!
横山奈緒
…私がそう言うと美奈子は微笑みながら頷いた
横山奈緒
私はその時、美奈子の笑顔に陰りが見えるのを見逃さなかった
(台詞数: 50)