周防桃子
『ある日、わがままな女の子の桃子ちゃんはおばあさんの家にお泊りをしていました』
木下ひなた
『「桃子、おばあちゃんが腕によりを掛けて作ったご飯、たんと食べておくれよぉ」』
木下ひなた
『その日のご飯は焼き魚と野菜の煮物とご飯とみそ汁、どれもとても美味しそうです』
周防桃子
『しかし、桃子は食べようとしません。桃子は食べ物の好き嫌いが激しいのです』
周防桃子
『「桃子、野菜は苦くて嫌い」そう言って煮物を遠ざけます』
周防桃子
『「桃子、魚は生臭くて嫌い」そう言って焼き魚も遠ざけます』
木下ひなた
『「桃子、ちゃんと食べないと大きくなれんよぉ!」おばあさんはカンカンです』
周防桃子
『「だったら桃子が好きな物出してよ!お肉とかお菓子とかさ、そっちの方が美味しいもん!」』
周防桃子
『桃子はそう言うとみそ汁をご飯にかけてかき込み、すぐに食卓を離れてしまいました』
木下ひなた
『おばあさんは何故かそれ以上怒らず、「また美奈子さんに攫われる子が出るなぁ」と呟きました』
周防桃子
『「美奈子さん……何それ?」桃子が聞き返します』
木下ひなた
『「美奈子さんは好き嫌いする子を攫って、好きな物だけ永遠に食べさせる神様さぁ」』
周防桃子
『「あっ、そんな神様なら攫われても良いかな?」桃子は取り合いません』
木下ひなた
『「美奈子さんの所から帰るには……もう部屋に戻っちやったねぇ」』
周防桃子
『「美奈子さんって、本当にいるのかなぁ?」桃子は少し楽しみに思いながら布団に入りました』
佐竹美奈子
『わっほーい……わっほーい……遠くから楽しそうな鳴き声が聞こえてきます』
周防桃子
『「これは……夢?」夢の中の桃子は、声のする方に歩いて行きます』
佐竹美奈子
『「ようこそ!美奈子の国へ!」広い所に出た桃子は、明るいお姉さんに出迎えられました』
周防桃子
『「もしかして、あなたが美奈子さん?好きな物を食べさせてくれるって本当なの?」』
佐竹美奈子
『「本当だよ!美味しい料理を、いくらでも、いくらでも作ってあげるからね?」』
佐竹美奈子
『美奈子さんがそう言うとステーキや唐揚げ、ケーキやアイスが山程乗った机が出てきました』
周防桃子
『「これ、全部桃子が食べて良いの?」机の料理はどれもとっても美味しそうです。』
佐竹美奈子
『「もちろんだよ!おかわりもいーっぱい用意してるからね?」』
周防桃子
『「いただきます!」机の料理は夢の様に美味しく、すぐにお腹いっぱいまで食べてしまいました』
周防桃子
『心ゆくまでお肉やお菓子を食べた桃子は美奈子さんに感謝して椅子から立とうとします……』
周防桃子
『しかし、何故か椅子から立つ事ができません、それどころか足が全く動かないのです。』
佐竹美奈子
『「桃子ちゃん、まだ机にご飯が残ってるよ?全部食べないと帰してあげないからね?」』
周防桃子
『確かに食べ切れなくて少し残した分がありました、仕方ないので残りを食べようと机を見ると…』
周防桃子
『なんと、机にはさっき食べた料理の倍以上の料理が積まれていたのです!』
佐竹美奈子
『「おかわりはまだまだあるからね!全部食べるまで帰さないよ!」美奈子さんは笑顔で言います』
周防桃子
『これは大変です、桃子ちゃんはお家に帰るために一生懸命ご飯を食べて行きます』
周防桃子
『でも、もうお腹いっぱいの桃子ちゃんではほとんど食べる事ができません』
周防桃子
『しかも、桃子ちゃんが一口食べると美奈子さんが新しい料理を一皿持って来るのです』
佐竹美奈子
『「おいしい料理を永遠に食べ続けられるなんて幸せだよね!」美奈子さんは笑顔で言います。』
佐竹美奈子
『周りを見ると、桃子の様に夢の中で攫われた子供が虚ろな目で山盛りの料理を食べ続けています』
周防桃子
『「私が好き嫌いしなかったら攫われなかったのかな…」もう一口も食べられない桃子は呟きます』
周防桃子
『「おばあちゃん、ご飯を残して、ごめんなさい……」』
周防桃子
『桃子がそう言うと、いつのまにか小さな机と少しの料理が現れたのです』
周防桃子
『その机に乗っていたのは焼き魚と野菜の煮物……昨日の晩御飯です!』
周防桃子
『もう一口も食べられないはずなのに、その料理を見ると急にお腹が空いてきました』
周防桃子
『恐る恐る食べてみると、今まで食べた料理よりもずっと美味しいのです!』
周防桃子
『桃子は香ばしい焼き魚と美味しく味付けされた野菜の煮物をあっというまに食べてしまいました』
佐竹美奈子
『「ご飯、全部食べ切ったね!」振り向くと、そこには笑顔の美奈子さんと料理の消えた机』
佐竹美奈子
『「好き嫌いをしたらまたいつでも夢に出てくるからね……」急に辺りが暗くなって行きます』
木下ひなた
『「桃子、朝ご飯の時間だよぉ!」桃子は美味しい朝ご飯の香りで目が覚めました。』
周防桃子
『「いただきます!」朝ご飯は昨日の残りの焼き魚と野菜の煮物です』
木下ひなた
『「おや?今日は好き嫌いせんのだねぇ」残さずご飯を食べる桃子におばあさんも上機嫌です』
周防桃子
『「うん、美奈子さんに攫われたくないもんね!」』
周防桃子
『それから、桃子は好き嫌いしない子になりましたとさ』…こんな絵本考えたんだけど、どう思う?
佐竹美奈子
なんで私がなまはげ扱いなの!?
(台詞数: 50)