高山紗代子
『……ふたりでこんな世界は壊して、いつまでもいつまでも、戦い続けようよ……。』
七尾百合子
『紗代子、私は乗客も、貴女も、必ず地上に帰すよ……』
七尾百合子
う～ん、この台詞は、もっと静かに口にする方が相応しいでしょうか?
高山紗代子
私は、今みたいに自信ありげで笑顔を浮かべながらの方がいいと思うよ。
佐竹美奈子
お疲れ様です!今日の撮影も熱が入っているみたいだね。
七尾百合子
あ、美奈子さん、来てくれたんですか。撮影前に二人で台詞合わせしてたんです。
高山紗代子
百合子ちゃん、役に入り出すと監督さん達の指導も聞こえない位のめり込むから……
高山紗代子
事前に、どういう感情を込めるか練りこんでおかないと、撮影がストップしちゃうんです。
七尾百合子
もう……そういう紗代子さんこそ、アクションシーンでOKが出た時に……
七尾百合子
「もっといい動きが出来ます!もう一回お願いします!」とか言い出して、撮影止めてますよね!
佐竹美奈子
フフッ、二人ならこの作品、いいものになりそうね。そうだ、今日は陣中見舞いに来たんだよ。
七尾百合子
押してきたその台車は、そういう意味だったんですね。大きな箱が二つ……
佐竹美奈子
こっちが紗代子ちゃんにで、こっちが百合子ちゃん用ね。開けてみて!
高山紗代子
それでは早速……
高山紗代子
それでは早速……美奈子さん、これは一体何でしょうか……?
佐竹美奈子
あー、ヤッパリ完成度が低かったかな?
佐竹美奈子
紗代子ちゃんが大好きな鯛焼きを作りたかったけど、家には「型」は無いからね……
佐竹美奈子
ホットケーキの要領で、まず皮を焼いて、あんこを挟んだの。
佐竹美奈子
それで、中華料理の技術に、果物や野菜を包丁で刻んで花や動物の姿にするのがあるから、
佐竹美奈子
タイの鱗や尾ひれをあしらってみたんだけど……まだまだ技量不足だったかなあ。
高山紗代子
(いえ、カービングの腕は凄くて、綺麗なんです。)
高山紗代子
(いえ、カービングの腕は凄くて、綺麗なんです……ただ、そもそものサイズが……)
高山紗代子
(お腹もパンパンにあんこが詰まっているみたいだし……タイじゃなくて、マンボウみたい。)
七尾百合子
私の方は何かな?
七尾百合子
私の方は何かな?……美奈子さん、私、これはちょっと……
佐竹美奈子
あ、そういえば百合子ちゃん、おはぎは粒あん派だったっけ?しまったなあ……
佐竹美奈子
でもね、中華のあんこは、胡麻油やクルミが入ってて、香ばしくて美味しいよ!
佐竹美奈子
騙されたと思って、食べてもらえないかな……
七尾百合子
(いえ、餡論争は、どうでもいいです)
七尾百合子
(いえ、餡論争は、どうでもいいです……箱いっぱいに一つのおはぎが詰められた現状の前では。)
七尾百合子
(もはや、秋風を思わせる萩の花でも、美人の形容詞・牡丹でもなく……)
七尾百合子
(敢えて例えるなら、南蛮の狂花、ラフレシア?)
高山紗代子
……そ、それじゃあ、劇場が誇る美奈子ちゃんの料理を、出演者やスタッフさんで分けましょう!
七尾百合子
(紗代子さん、ナイス判断です!)
佐竹美奈子
それは大丈夫だよ。もう皆さんに一箱ずつ配っておいたから。
佐竹美奈子
『今日の撮影は、これだけで乗り切れそうだ』って。みんな喜んでたよ。
七尾百合子
(それは感謝感激の言葉ではなく、カロリーを想像して、過剰摂取しないための確認です。)
高山紗代子
…ええと、美奈子さん。美奈子さんの学校や活動に支障が出るから、ここまでしなくてもいいよ?
佐竹美奈子
そうかもしれないね。時間が掛かったから、今度からは休みの日に届けるようにするね。
高山紗代子
(ああ、ヤッパリ伝えたいことが伝わってない。そういう意味じゃないのに……)
佐竹美奈子
それじゃあ、しっかり食べて、いい作品になるよう頑張ってね!
高山紗代子
……
七尾百合子
……生ものだから、とって置けませんよね……
高山紗代子
もうこうなったら、覚悟決めるよ!ヒーローも悪役も、こんな事に屈するわけにはいかないわ!
七尾百合子
そうですね……それじゃあ、
七尾百合子
そうですね……それじゃあ、『あんこ食うかい。』
(台詞数: 46)