所恵美
昨日のごたごたから一夜明けて。
所恵美
病室に引きこもっているわけにもいかず、アタシは街に出ていた。
所恵美
自分のための、自分のためだけの願いねぇ…。正直、昨日はああ言ったけどまったく見当つかない。
所恵美
昨日はあの後、真っ先に自宅に帰ったのだけど…。
所恵美
正直、筆舌に尽くしがたいほどに沈んでいた。
所恵美
両親だけじゃなくって、アタシの兄も。
所恵美
自分のせいだとはいえ、あんな様子の家族、アタシは見たくない。
所恵美
家族みんなのためにも、なんとかして元に戻らないと。
所恵美
家族みんなのためにも、なんとかして元に戻らないと…って、また人のために考えてるや。
所恵美
街頭にある時計をちらりと見ると、学校がそろそろ始まる時間だった。
所恵美
…学校の方にも行ってみようか。アタシはちょっと力を込めて、宙に浮いてみた。
所恵美
この浮遊能力、便利だけど喜ぶに喜べないなぁ…。便利だけど。
所恵美
――――――――――。
所恵美
学校の様子はいつも通りといえばいつも通りだった。
所恵美
違いがあるといえば、アタシの席が空席になってるくらい。授業が滞りなく進んでいる。
所恵美
休憩時間にクラスメイトの会話に耳を傾けてみると。
所恵美
「ねえ…今日は恵美休みみたいだけどアイドルの仕事、だったっけ?」
所恵美
「いや、昨日事故があったでしょ?あれに巻き込まれたって噂だよ」
所恵美
「事故!?」
所恵美
「うん。SNSで色々情報が流れてる。嘘かと思ったけど、実際に休んでるみたいだし…」
所恵美
「ど、ど、ど…どうしよう…!お、お見舞いに行った方が良いのかな…?」
所恵美
「どこの病院かもわからないし、そもそも真実かどうかも分からないけどね」
所恵美
「うぅ……」
所恵美
どうやら、あの事故の情報を流した人がいるみたい。ニュースでは実名報道されてなかったけど…。
所恵美
…正直、アイドルとして知名度が上がったって分かるけど、こんな分かり方はしたくなかったね。
所恵美
……それにしても。
所恵美
普段だったらこの時間、ダチと一緒に教室でおしゃべりしてるはずなんだけどなぁ…。
所恵美
なんか、こう…ここにいて、自分の話題なのに話の輪に入れないのがなんかもやっとする。
所恵美
だけど、このもやもやした気持ちは今のアタシに大切なのかもしれない。
所恵美
こう、自分に対するジェラシー的な?…何に嫉妬してるんだろうね、アタシ。
所恵美
……。
所恵美
……はぁ。
所恵美
自分でもなぜ吐いてしまったのかよくわからない溜息。アタシはそのまま学校を後にする。
所恵美
このままふらふらと街を徘徊するのもいいかもしれないけど、今はそんな気分じゃなくて。
所恵美
アタシは、足を劇場の方へ向けることにした。
所恵美
劇場は、アタシにとって家や学校と同じくらい大切な所だから。
所恵美
…アタシが起こした件で、どうなってるのかいろいろ気になるしね。
(台詞数: 37)