周防桃子
長い準備期間も、やるべきことをやっているうちに、あっという間に過ぎてしまって。
周防桃子
そして、今。桃子は決戦のステージに立っている。
周防桃子
広いドームは、真ん中のこのステージにまでとどくくらいに、すごい熱気に包まれていた。
周防桃子
ここに集まったファンの、トーナメントへの期待が、ものすごく伝わってくる。
周防桃子
…でも、それ以上に熱くなっているのは、桃子たち出場者のほうだった。
周防桃子
ファンへの自己紹介とあいさつは、いつもと比べて手短で、味気なく感じたかもしれない。
周防桃子
だけど、それは、気の利いたことが言えないくらいに、集中力が高まっているからであって。
周防桃子
その顔を見るだけでわかる。全員、気合の入り方がケタちがいだって。
周防桃子
一回戦の準備をするように指示が出て、桃子たち出場者は、それぞれのステージに散っていった。
周防桃子
桃子たちの戦いは、一番外側にある、8つのステージから始まる。
周防桃子
勝った人だけが、内側にある次のステージ進むことができて、それをくり返していって…。
周防桃子
…最後に、もう一度このドームの中心にあるステージに立てるのは、たった一人。
周防桃子
その一人になるための、熱くはげしい戦いのはじまりだった。
周防桃子
…桃子は、ほとんど走るような早足で、自分のステージに急ぐ。
周防桃子
桃子がジュリアさんとぶつかるのは第一試合。そんなに時間的に余裕はない。
周防桃子
今、ステージでは司会の春香さんや千早さんがMCで間をもたせてくれているけど、急がなくちゃ。
周防桃子
それでも、少しだけ立ち止まって、桃子は貴音さんのいる場所を見た。
周防桃子
遠くに見える貴音さんは、誰かと話しているようだった。あれは…静香さん?
周防桃子
すぐに話は終わったようで、静香さんは貴音さんからはなれていったけど。
周防桃子
さっそく、むこうでも火花をバチバチやってるみたいだね。
周防桃子
「…貴音さん。負けないでよ。」
周防桃子
口の中でつぶやいて。桃子は貴音さんに背を向けて、走り始める。
周防桃子
気がつけば、スタッフさんが何度も呼んでいて、桃子はあわててステージ下の待機場所へ向かった。
周防桃子
桃子の準備には、時間がかかる。たとえば、衣装の着替えとか。
周防桃子
ステージの下には、着替え用のボックスがあって、その場で衣装替えができるようになっていた。
周防桃子
女性のスタッフさんに手伝ってもらいながら、メイクやヘアセットが乱れてないか、チェックして。
周防桃子
うん、着替えはOK!あと、もうひとつ…。
周防桃子
今回はすべてが自由ってことで、桃子が希望したことは、ぜんぶかなえてもらっている。
周防桃子
…衣装だけじゃなくて、桃子のとっておきの『作戦』も。
周防桃子
着替えが終わって、『作戦』の準備ができているのを確認してから、桃子はステージに飛び出した。
周防桃子
桃子のとなりのステージに、先に出て待っていたらしい、ジュリアさんの姿が見える。
周防桃子
そして、目の前には司会の千早さんがいて、ほっとした顔をしていた。
周防桃子
遅かったわね。ヒヤヒヤしたわよ。と、桃子にこっそりささやいていたけど。
如月千早
「…皆さん、大変お待たせしました。それでは、第一試合を開始いたします。」
周防桃子
千早さんのアナウンスに、ドーム全体がどっとわきあがる。
如月千早
「その前に、二人に聞かなくてはなりません。」
如月千早
「桃子。ジュリア。今回の試合形式はどちらを選ぶのかしら。フェス?それともライブバトル?」
周防桃子
試合形式を選ぶのは、今回からの新ルール。
周防桃子
桃子がフェスを断れば、いったん仕切りなおして、ライブバトルに。
周防桃子
フェスを選べば、ジュリアさんと正面からの力比べになる。
周防桃子
千早さんのその問いかけに、ジュリアさんは。そして、桃子は…。
周防桃子
「フェスで。」
ジュリア
「もちろん、フェスさ。」
周防桃子
…ほぼ同時に、答えた。
如月千早
「二人ともフェスを希望していますので、今回の試合形式はフェスに決定しました!」
周防桃子
そう。桃子の選んだ道。桃子の作戦は…。
周防桃子
ジュリアさんという強敵を正面から突破するという、勇気の作戦だった。
(台詞数: 47)