望月杏奈
――杏奈達がウバメのもりから帰った時、空はすっかりと暗くなっていた。
七尾百合子
…………。
望月杏奈
――百合子さんの身に降りかかった事態があまりにもショックだったらしく。
望月杏奈
――今はホルードに負ぶわれて移動している。その間、百合子さんが口を開いたのは、たった一回。
七尾百合子
「知らない街だ……」
七尾百合子
――――――――――。
所恵美
おっと、杏奈じゃん!こんな時間にどうしたのさ~?
望月杏奈
ひゃうっ!?…め、恵美…さん?
所恵美
正解、恵美だよ。さっきぶりだけど、屋敷跡に行ってみた?
七尾百合子
っ…。
所恵美
…ねえ、杏奈。そのホルードに背負われてる子は誰?アタシらがバトルしたときにいなかったよね?
望月杏奈
うん…。森の中で迷子になってて、コガネシティまで案内してきたの。
所恵美
【ジッ…】へぇ…。きみ、名前はなんていうの?
七尾百合子
あ…七尾、百合子です。
所恵美
百合子だね。なんとなく分かってると思うけど、アタシは所恵美。よろしくね、百合子。
七尾百合子
よ…よろしくお願いします…。
所恵美
それで…杏奈と百合子。こんな時間に街中を歩いてるけど、今晩泊まる宿とかはどうしてるの?
望月杏奈
えっと…ポケモンセンターに泊まろうかなって、思ってます…。
所恵美
あー、それなんだけどね。それ無理だよ。ポケモンセンターも宿泊宿も今は満室なんだ。
望月杏奈
……え?
所恵美
今朝別れるときに行ったと思うけど、近いうちに…明後日大きなイベントがあるんだ。
所恵美
イベントへの参加目的のお客さんが沢山いてさ、近隣の町すら泊まれないと思うよ?
望月杏奈
そんな…。
所恵美
そこで、アタシに提案があるんだけど……。
所恵美
――――――――――。
所恵美
ささ、遠慮しないでいいから上がって上がって!!
望月杏奈
…本当に、泊まらせてもらっても、いいんですか?
所恵美
へーきへーき!両親は件のイベントの関係者で、今日明日はアタシしかいないんだよ。
所恵美
あ、部屋もお風呂も好きに使っていいからね?ただし、ご飯はアタシと一緒に食べること!!
所恵美
なんなら、お風呂も一緒に入っていいからね?にゃははっ。
望月杏奈
…あの、恵美さん。どうして、こんなに親切に…してくれるんですか…?
所恵美
どうしてって言われても…アタシ、友達にあきれられるくらいにお人よしって言われるんだ。
所恵美
だからかな?それに、あんなに衰弱した子を野宿させるわけにはいかないでしょ?
七尾百合子
……。
所恵美
…杏奈はとっさにごまかしたけど、誰がどう見てもただの迷子じゃないよね、あの子。
所恵美
格好もボロボロだし、あの子のポケモンも随分と心配してるし、何より知らないポケモンもいる。
望月杏奈
…ごめんなさい。
所恵美
謝らなくていいってば!それより、百合子の事をちゃんと面倒見てあげなよ?
所恵美
それじゃ、アタシはお風呂の準備してくるから。くつろいでてね?【トテトテ】
七尾百合子
……恵美さん、いい人ですね。こんな見ず知らずの怪しい人間ですら、泊めてくれるなんて。
望月杏奈
そう…ですね。さすがに…お風呂は冗談、だと思いますけど…。
七尾百合子
あの…杏奈ちゃん。お願いがあるんです。ずっと考えていたことなんですけど…。
七尾百合子
明日、この街の図書館か資料館に連れて行ってほしいんです。私の身に起こった事を知りたくて…。
七尾百合子
…迷惑をかけるわけにはいかないから、案内してもらえるだけでいいです。だから…!!
望月杏奈
いいですよ…。杏奈、明日の予定は決まってないですから、一緒に調べに行きましょう…。
七尾百合子
っ!あ、ありがとうございます!!
望月杏奈
そうだ…。ねえ、百合子さん。今から、杏奈とお話しするとき…敬語を抜きにしない…?
七尾百合子
敬語を抜き…?分かったよ、杏奈ちゃん。えっと…こんな感じでいいかな?
望月杏奈
うんっ。よろしくね、百合子さん。
七尾百合子
敬語抜きだなんて、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいなぁ…。えへへっ。
(台詞数: 50)