所恵美
「私が一番最初に声をかけて貰ったのは…」
所恵美
__一年前のクリスマス近く__「私は親とケンカをして、着の身着のまま、自宅を飛び出し…
所恵美
「…何処へ向かうともなく電車に飛び乗り…1人夜の都内へと向かっていた。」
所恵美
「休日にいつも友達と遊びに行く駅に降り立つ…」
所恵美
「でも、そこは昼間に見る街の景色とは違っていて…」
所恵美
「異常にキラキラ光る看板や…お店への呼び込みの声や…なんだかわからない様々な音楽…」
所恵美
「しばらく、その様子をボゥっと観ていると…」
所恵美
「私はいつの間にか、酔いしれたようにその灯りへとフラフラと歩みを進めていた…」
所恵美
「そこには…客引きの店員らしい声をかけ、酔いどれて電柱の下に吐くひと…」
所恵美
「会社帰りのサラリーマン集団?と思われる意味不明の掛け声…」
所恵美
「今思えば…そういういろんな声に私は引き込まれていたのかもしれない…」
所恵美
「__私がしばらく、あてもなくその通りを歩いていると…」
所恵美
「私の後ろから声をかけられ、左腕をグイッと捕まれた。」
所恵美
あいたっ…なっ、なにすんの…
黒井社長
中年男)うぃ…お姉ちゃん。おヒマなら、おぢさんがお相手するよぉ〜♪
所恵美
「振り向くと中年位のおっさんが「捕まえた」と言わんばかりに私の腕を捕まえていた。」
所恵美
「私は無言でソレを振り払い、立ち去ろうとしたけど…」
黒井社長
中年男)姉ちゃん…「そういうこと」がしたくて、ウロついてんだろぅ〜?
所恵美
なっ、なによ。そういうことって…離してよ!
所恵美
「私は強く言ったけど…逆におっさんに引っ張られる…」
黒井社長
中年男)優しくしてヤッからよぉ〜♪ぐへへ…♪
所恵美
なっ、ちょ、ちょっと…ヤダ。誰かぁっ〜!
黒井社長
中年男)いいじゃないか、お小遣いあげるからさぁ〜♪んっ…なっ、なんだぁ〜おまえは?
高木社長
ちょっと失礼。お話を伺いたいのですが…宜しいですか?
所恵美
えっ…「おっさんと私に声をかけてきたのは、さらに頭一つ分大きな50歳位の男の人…」
所恵美
「背広にオーバーコートを羽織ったその人が仁王立ちになって中年オヤジの進路を塞いだ。」
黒井社長
中年男)なんだぁ〜、じじい…オレとやんのかぁ〜?
高木社長
いえいえ、女性に少々乱暴な事をされている様子でしたので…声をかけさせていただきました。
黒井社長
中年男)んあ〜?オレが乱暴だってかぁ〜?お前さん何者だぁ〜?
高木社長
あぁ、失礼しました。(ゴソゴソ)私、こう言う者…
黒井社長
中年男)へっ…こっ、この姉ちゃんがいけねえんだからな!あばよ!!
高木社長
高木)やれやれ…勘違いに助けられたか…キミ、怪我は無いかい?
所恵美
「そういう長身の男は、路上にへたり込んでしまった私に手を差し伸べてくれた。」
所恵美
恵美)あっ…ありがと。 高木)よっ……ん?
所恵美
恵美)なっ…なんですか? 高木)キミ…高校生かな?
所恵美
「ドキッ……思わず、突かれた図星に握る手が湿る…」
所恵美
高木)そうか…あ。一応、交番に行こうか? 恵美)えっ…何。…警察なの?
高木社長
私は違うよ…でもほらアレ。警察の防犯カメラ…
所恵美
「私が見上げると、街灯の高さにカメラのようなものがこちらを伺っている様子だった…」
高木社長
ちょっとした小競り合いだし、時間帯的に私も勘違いされたくないからね…
高木社長
高木)被害届けを出しておいた方がいいからね? 恵美)…ウチに連絡するの?
所恵美
そう私が尋ねると男は私に耳打ちするように…
高木社長
いや……この時間この界隈は札付きが多いからね。キミも気をつけた方がいい。
所恵美
……!?「瞬間…私は身体が寒くなり、小刻みに震えてしまった。」
所恵美
高木)はい、そんな格好では寒いだろ?「そういうと男は着ていたコートを私に着せてくれた。」
高木社長
一緒に行ってあげるけど、後のことはできるかな?
所恵美
「私は言われた言葉に返す代わりに、彼の腕をギュッと掴んだ。」
所恵美
「正直、自分のした行動に怖くなって助けを求めていたのかもしれない…」
高木社長
…いいよ。一緒に行こうか?
所恵美
「導かれるまま、通りをしばらく歩くと…大きな交差点にある、交番に入って行った。」
(台詞数: 50)