所恵美
アタシがその視線に気付いたのはつい最近だ。
所恵美
どこにいても何をしていても見られている感覚があるのだ。
所恵美
それこそ入浴中やトイレにいるときでもだ。
所恵美
最初はストーカーや痴漢かと思ったけど…
所恵美
どうも違うようだ。
所恵美
ああいった欲にまみれたかんじでなく好奇心のような…
所恵美
そんな視線だった。
所恵美
でもアタシと一緒にいる時でも家族や友達は何も感じないらしい。
所恵美
アタシだけが視線を感じている…
所恵美
そう思っても優越感など無くむしろ恐怖感さえ感じる。
所恵美
一体なんなのだろうか?
所恵美
アタシはその視線に意識を向けるようになった。
所恵美
それからどれくらいたっただろうか…
所恵美
ある日、何処からか声が聞こえてくる気がした。
所恵美
声のする方を意識してみるとそれは視線のする方向からのようだ。
所恵美
??「ねえ、この子、私達に気付いてるみたいだよ」
所恵美
???「ほう、たまにいるんだよな。そういうレアなのが」
所恵美
??「じゃあ自分達が観賞動物だって理解してるのかな?」
所恵美
???「そこまでは無理だろう。所詮観賞用の下等生物だからね」
所恵美
???「しかしこの生物は学習能力が無いな。毎回自分達で住処を破壊して絶滅するんだからな」
所恵美
???「そろそろこいつらも滅びる頃だな。環境汚染が末期だしいつ核戦争が起きるか分からん」
所恵美
??「またぁ?なんか毎回同じパターンで滅びてるよね〜」
所恵美
???「だから学習能力が無い下等生物なんだよ」
所恵美
??「ねえ、また新しいの買ってよ。惑星型生物観賞キット地球モデル」
所恵美
???「またか?毎回同じようにしか成長しないのに…」
所恵美
??「なんか気に入っちゃって…」
所恵美
???「なら仕方ないな。なんならオプションの太陽系も付けてやろうか?」
所恵美
??「え、本当に?」
所恵美
???「ああ、奴らが必死に粗末なロケットやステーションを作るところは見ていて笑えるぞ」
所恵美
??「ありがとう、パパ。楽しみだなぁ」
所恵美
……
所恵美
……なんてことだ……
所恵美
アタシ達はただの観賞用の動物だったのか…
所恵美
それこそ水槽の金魚や虫かごで飼われている虫と同じに…
所恵美
この地球という檻に閉じ込められた見られるためだけに存在する生き物…
所恵美
…気付かなければ良かった…
所恵美
アタシはこの先一生、もしくはこの地球が滅びるまでこの視線を気にして生きなければならない。
所恵美
アタシはそんな生活に耐えられるだろうか…
所恵美
アタシ達を飼っている連中の視線に気が狂うことなく…
所恵美
溜め息をつき、肩を落として歩くアタシを…
所恵美
ニヤニヤとした笑いを浮かべているだろう視線が後を追って来た。
(台詞数: 41)