七尾百合子
《キーンコーンカーンコーン》「ふぅ終わった…さて、帰ろうかな」
七尾百合子
私は七尾百合子、山で遭難したあの日から、およそ1ヶ月が過ぎようとしていた
七尾百合子
幸い、捜索隊が出動する前に自力で下山できたため、ニュース等に取り上げられることもなく
七尾百合子
平穏な日常に戻ることができていた
七尾百合子
………ただ一点を除いて
所恵美
「ゴメン百合子、助けて!!」
七尾百合子
「きゃっ!」クラスメート「どうしたの?七尾さん」
七尾百合子
「い、いえ、その……虫が入ってきて」クラスメート「うそヤダ、私らも早く帰ろ」
七尾百合子
「はぁ……もう、窓から来るのはやめてくださいって、いつも言ってるじゃないですか」
所恵美
「あはは、ゴメンゴメン。でも、だからって虫扱いはヒドイんじゃない?」
七尾百合子
「さっきのは、誤魔化すために言っただけです」
七尾百合子
「それで、どこですか?私は幽霊じゃないんですから、ちゃんと歩ける道を案内してくださいね」
所恵美
「わかってる……いつもありがとね」
七尾百合子
「見捨てるわけにもいきませんからね…琴葉さんのためにも」
七尾百合子
霊感のない人が幽霊になった場合、他の幽霊が見えるようになったりはしないらしい
七尾百合子
なので幽霊は基本的に独りぼっちだ
七尾百合子
だから、霊感があるとバレると、しつこく憑きまとわれる
七尾百合子
まぁ恵美さんの場合は、少し事情が違うのだけども…
七尾百合子
あの山から無事に下りられたのも、恵美さんの協力があってこそだ
七尾百合子
ちなみに、幽霊に憑きまとわれた場合、私は退治するような能力はないので
七尾百合子
死神がその霊を迎えに来るまで、耐え忍ぶことになる
七尾百合子
だいたい四十九日頃だ
所恵美
「お、見えてきた、あそこだよ」
七尾百合子
「あぁ、もうあんなに人だかりが」
七尾百合子
これが、あの遭難した日から未だに終われないでいる、非日常の爪痕である
所恵美
【後編へ続く】
(台詞数: 26)